斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

特許庁を訪問しました。

2015年11月14日 20時18分30秒 | 斎藤秀俊の着眼
我が国は世界でも有数の特許出願国です。私もこれまで129件の特許を出願しています。

11月12日に、我が国の出願された特許を分野ごとにまとめて、今後の知財戦略を作るための資料を作ろうという委員会があり、それに出席するために特許庁を訪問しました。
いつもは、拒絶理由通知を解消するために審査官に面接に来たり、拒絶査定を見事に食らってしまって、最後の審判に出席したりするときに特許庁に来ているので緊張しながら建物に入るのですが、今回は委員会でお気楽でした。


今回の委員会の担当は審査第一部です。特許審査部は、第一部~第四部に分かれています。特許の審査を行うという点では、特許審査第一部~第四部は同じですが、その担当する分野が異なります。
第一部の担当分野は何かというと、特許審査第二部~第四部で担当しない分野になるそうです。審査第一部は、物理系、光学系、社会基盤系の3部門に分かれています。いつも私の出願するところは、第一部のナノ物理と第三部の無機化学のセラミックスと蒸着になります。

はじめに第一部長にご挨拶し、いろいろとお話をおうかがいしたら、特許庁に入りたてのときにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)の審査をよくやられていたそうです。まさに私の専門分野。
その後、委員会をこなしまして、無理をお願いして、審査官が審査している現場を見せていただきました。各大学の知財本部担当教員でも審査官の仕事場を見学したことある人はそうそういないでしょう。(自慢になってしまいごめんなさい)

IDカードで開くドアをくぐり中に入ると、大きなフロアにたくさんの机とディスプレイが並んでいました。審査分野ごとにグループを組んでいますが、どういう配置になっているかは、秘密。特許庁全体で審査官は約1000人。女性の審査官は最近増えていて、新人の約30%くらいだそうです。フロアによっては半分以上が女性というところもあるそうです。

お仕事中の審査官にいろいろな話を聞いてしまって邪魔をしてしまいました。その中で印象に残ったのが、「この特許、ここをこのように書き換えてくれれば特許査定にするのに、拒絶査定通知を送ったら出願人があきらめてしまうときがあります。そういうときは惜しいなあ、と思います」というお話。全くその通りで、私も特許をたくさん出してきてわかりましたが、本当にすごい特許は拒絶理由通知が繰り返され、挙句の果てに拒絶通知がくるものです。最後の審判までいってしっかりと説明して、審判官が納得してくれまして初めて特許査定が下りるもの。社会に影響を与える特許については、特許庁もそれくらいに慎重に審査するものです。特許がおりたら、それ以外の人はその技術で商売できなくなるわけですから。

「数か月後に、いま抱えている拒絶査定案件をもって再度特許庁に参りますね」とご挨拶して、特許庁をあとにしました。考えてもみれば、委員会があと3回あるので、合計4回は特許庁に訪問予定です。