湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

自然に降ってくる言葉のような

2015-07-15 00:40:06 | 
7月6日の合評会で下記のMの詩について話し合ったことを投稿します。

    断層

この雄のネコのときも
気がつくと
抱いていて
困惑なんかしてなかった
木が立っているのに似ていたけれど
寄ってくるものは
かわいくて
どうなってるのときかれても
こうなってるとしかへんじできない
たとえば当事者である
このネコと私の関係が
随分骨の折れるものだとしても
そうではないかもしれないし
そのようではあるけれどそんなにしてまで
どうしても愛をしなくてはならないのか
あいまいにしてはいけない
そのへんの問いかけを
全然しなかったわけでもない
何だか空気みたいだけれど
空気にだって深刻さはあるし
なしではすまない
私だけの透明な時間が君にはわからない
あのときも気がつくと夜になっていて
私はすこし泣いた

泣くだけの大いなるものがあるのかないのか
力を込めて何を行えばよいのかときかれても
何だっていいとしかいえなかった
君のいう愛に於ける女性の陰謀など知らない
くどくど思い悩んでいる君に
寝ることにそんなに重きをおくのは中学生みたいなんていわなかった 
素晴らしいオーヴァーコートの襟を高く立て
カサカサと枯葉を踏んで
淋しい並木道を鋭い遠近法の焦点の方へ
消えていくような恋
いや もう沢山です
突然そんなことをいいだして
僕を愛さないで!という顔
あの顔

身震いなんかしなかった
君が二十歳前後なら
女性の心と体に驚きを持って
接するだろうけれど
いまは私だって…………
仮にこのネコと君とに何かあっても
捨て身になんかならないし
ネコがおもしろくて
しょうがないというわけでもない

:作者の弁 :評者の弁
お題の「勘違い」をズレのある関係・感情と解釈して、ちぐはぐなまま共白髪になっていく男女のことを書きました。
相手の男性を突き放している主人公の切なさを感じます。俯瞰で自分を見ている感じ。
最初と最後に登場する雄猫との関係に、作者の男女感を反映させてるのね。
コレットの小説「牡猫」からイメージしました。ネコを挟んで嫉妬し合うストーリーです。私は考えて行動するタイプではないのに、彼がゴジャゴジャ言うから、しんどかった~! 第2連6行目、この詩で最長の行で一気に畳みかけて、彼との軋みを表現しました。その直後の4行は映画「第三の男」のラストシーンをイメージしたんだけどキザ過ぎたかも。
でも格好つけた言葉を使っていないから、全体に柔かい世界観の中に自然に落ちて来た言葉が記されているという印象です。
暗誦できるくらいの平易さと音楽的流れを心がけて書きました。
「どうしても愛をしなくてはならないのか」「空気にだって深刻さはあるし」という表現が特に好き!(一同賛同
コメント
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