昨日今日と風が強いので、逗子海岸東浜から富士山がよく見えます。沖の大崎の先端近くにいい白浪が立ってます。
さて、ここのところTとAが散文詩の創作に挑戦しているのですが、実際にやってみると難しいものです。
合評会でAの「ランチタイムの思い出」は「書き出しが実用文的で飛躍がない」「終わり方にも余韻がない」と評されてしまいました
そこでエッセイ的ではない散文詩の手本になるような詩を探してみましたよ。
モンシロチョウ夏型 伊藤聚
風に乗っているというのでもなかった。はじめは交叉点
の上をいっきに飛び抜けるいきおいを持っていた。交叉
点では南の風が周囲のビルに乱され、瞬間毎に方向を変
えていた。直進の信号が赤に変る直前に外側の車線に移
り、西へ向う車の間にまぎれこんだ。ここからはしばら
くその姿が見えない。強い排気に煽られたかどうかして、
突然高度を取り戻した。デパートの配送のパネルトラッ
クのスチールの角に触れそうになり(実際接触したのか
も知れない)急旋回して離脱する体勢をとったが、たち
まち箱型車体の後流の渦に巻込まれてしまった。タイヤ
の高さをなんとか維持してそれでも七、八台をやり過し
たあと、アスファルトの路面に降りた。白い翅をたてて
いる。そして、助からない。グレイのトヨタが前輪で轢
いていった。翅は破れもせず、たたまれて横倒しになっ
ている。それからあとは、通過する車が乱す大気によっ
て翅は立たされ倒され、叩きつけられ、ふわっと一回転
だけ空中に舞い上がらされるようなこととなった。
交差点で目撃した情景を詳細に描写しているだけと思わせておいて、モンシロチョウに託されたメタファーをビリビリ感じさせます。
通常の詩形をとって改行をしては、この緊張感は出ません。
さて、ここのところTとAが散文詩の創作に挑戦しているのですが、実際にやってみると難しいものです。
合評会でAの「ランチタイムの思い出」は「書き出しが実用文的で飛躍がない」「終わり方にも余韻がない」と評されてしまいました
そこでエッセイ的ではない散文詩の手本になるような詩を探してみましたよ。
モンシロチョウ夏型 伊藤聚
風に乗っているというのでもなかった。はじめは交叉点
の上をいっきに飛び抜けるいきおいを持っていた。交叉
点では南の風が周囲のビルに乱され、瞬間毎に方向を変
えていた。直進の信号が赤に変る直前に外側の車線に移
り、西へ向う車の間にまぎれこんだ。ここからはしばら
くその姿が見えない。強い排気に煽られたかどうかして、
突然高度を取り戻した。デパートの配送のパネルトラッ
クのスチールの角に触れそうになり(実際接触したのか
も知れない)急旋回して離脱する体勢をとったが、たち
まち箱型車体の後流の渦に巻込まれてしまった。タイヤ
の高さをなんとか維持してそれでも七、八台をやり過し
たあと、アスファルトの路面に降りた。白い翅をたてて
いる。そして、助からない。グレイのトヨタが前輪で轢
いていった。翅は破れもせず、たたまれて横倒しになっ
ている。それからあとは、通過する車が乱す大気によっ
て翅は立たされ倒され、叩きつけられ、ふわっと一回転
だけ空中に舞い上がらされるようなこととなった。
交差点で目撃した情景を詳細に描写しているだけと思わせておいて、モンシロチョウに託されたメタファーをビリビリ感じさせます。
通常の詩形をとって改行をしては、この緊張感は出ません。