湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

トンネル萌え

2015-07-20 00:00:49 | オリジナル
合評会でMに「あなたたち、トンネルが好きね~」と言われました。
トンネルを通るのはそんなに好きじゃないけれど、確かに表現モチーフとしては好きですね。
漫画の中にも印象に残る表現があります。
トンネルをいくつも通りました
人生ももしかしたら
このようなものかしらと
覚悟しました
光・闇・光・闇・光・闇      
(大島弓子「クレイジー ガーデン PART1」より)

トンネルによっては一瞬別の次元に入り込んだような錯覚を覚えたりもします。
下記はユリイカ2月号「今月の作品」に掲載されたAの詩です。
隧道

小さな山が海に足を浸している
自由奔放に花を咲かせた木々を両手いっぱいに抱え
気前よく裾を開いて
人や車が通り抜けるのを許している

ヘッドライトを点けて真っ直ぐに
あなたがそこに滑りこんで行く
あなたはチラと振り返る

獣が微かな音と匂いを立てて
ゆっくり三回転しながら傍らを過ぎる
次々に出口で転生し
すっくり路面に立って歩き出す姿が
小さく私の目に映る
入口にいる私も向こう側からは同じように
小さく見えているのだろう

しかし私は動けないのだ
あなたのヘッドライトは
私の行き先を示す灯りではないから

夥しい影がすべて通り過ぎ虚ろになった穴
あなたが消えて行った隧道に背を向け
一人で海に向かうしか術はない
昨夜私と会っていた事はあなたの記憶から散り
花弁は河口から海に流れている
せめてそれを追って
海に向かうしか術はない
コメント
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