湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

千家元麿「若い母」

2014-12-23 00:00:57 | 
白樺派詩人、千家元麿の詩集を読みました。いちばん感動したのはこの作品。
若い母 
若い娘がこの頃生れたばかりの
赤ん坊を背負つて
買ひ物に沢山出た女の中に交つて歩いてゐる
彼女はこの新しい経験を恥かしさうに顔に現はす程喜んでゐる
彼女の笑ひには得意と羞恥があらはれてゐる
彼女は木綿の小さつぱりした娘々しい着物を着て
赤ん坊にも贅沢にならない愛の籠つた新しい着物を着せてゐる。
彼女の夫は役所にでも行つてゐるのだらう
彼女はまるで喜びに圧倒されて歩いてゐる
彼女の前に全世界はどんなに輝いてゐるだらう
彼女の心はどんなに賑つてゐるだらう
彼女は手柄をしたのだ。
涙ぐみたいほど愛の激情に彼女は迫られてゐるのだ。
見るものが何も彼も新しく見えるのだ、
見よ若き母が隠し得ない喜びに輝きつゝ
赤ん坊を背負つて買物に歩むのを
その素直な姿の娘らしいつゝましさを
その質素な姿の美しさを。


自分が0歳児を背負った「若い母」だった頃をまざまざと思い出し、泣きそうになってしまいました。
 御成にて
千家元麿は大正時代に活躍した詩人です。大臣も務めた男爵で「年の始め」を作詞した千家尊福の非嫡出子でした。
大正11~12年、鎌倉の御成に住んでいました。
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