湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

冬型の気圧配置

2014-12-14 00:00:35 | オリジナル
 昨日のマジックアワー
夕方ちょっと外に出たら吹き飛ばされそうになりました。
今日も寒くなりそうなのでお気を付けください。
ずっと吹いている風の音を聞いていたら自分の最期を夢想し始め、
こんな詩ができました。

   強風に洗われる

自然が人間に叩きつける悪意――風が
目的を最大限に果たそうと意気込んでいるように
休みなく不吉な調べを奏で
埃と落葉を集中して私に吹きかける
海岸の死せる屍や生ける屍を覆っていた砂を
一粒残らずさらっていく
誤魔化し好きの人間たちに向けられた的確な意思で
輝く恐怖が剥き出しになる
世界はついに戦意を失い
錐揉みで落下する

長い長い助走の後の
強風吹き荒れる完璧な日だ
早過ぎず遅過ぎず手に入れた 
高過ぎず低過ぎない精確な空
遥か下方に去った
人類が舐め尽くそうとしている飴玉
雲ひとつない視線で
その球形の蒼を見下ろせば
心身が急激に鎮まっていく
体温はとうに消えた
内臓はきっとミント色に凍っている

ずっと
取るに足らぬ意見や感想や情緒や目的を
生臭い日常の上に意味ありげに重ねてきた
善や悪や虚を雑に包み隠して
偶々出会う風と無意味に交換してきた
最期に訪れた 
思想も理想も吹き飛んだ完璧な一日
長い長い間待っていた
改めて人らしくなく生き始める日だ


コメント
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