三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

フランソワ=グザヴィエ・ヴェルシャヴ『フランサフリック』

2007年04月15日 | 戦争

アフリカの多くの国では政治は腐敗し、人々は貧困に苦しみ、内戦は絶えない。
ジョン・ル・カレ『ナイロビの蜂』を読むと、先進国や大企業による搾取が大きな原因である。
フランソワ=グザヴィエ・ヴェルシャヴ『フランサフリック』に、フランスが旧植民地国を食い物にしていることが詳しく書かれてある。

(フランスは)1960年代以降、この国がかつてアフリカに築いていた広大な植民帝国が、歴史の趨勢によって崩壊を余儀なくされた後も、自国の植民地利権保持のために、ありとあらゆる非合法手段をもちいて、新たに成立したアフリカ諸国の国内政治に容喙しつづけている。諜報機関を用いて、真の独立を求める開明的な政治指導者を抹殺、腐敗した独裁者を傀儡として祭りあげ、石油をはじめとする資源を独占する。人道や開発を名目として供与される援助はそのほとんど全額が、フランス政界の闇資金として環流される。現地の独裁政権に膨大は量の武器を提供し、諜報機関や傭兵を使って地域の紛争に介入、「部族」「民族」間の対立を煽り、内乱を醸成する。果ては「部族」間、「民族」間の集団虐殺を容認するばかりか、その共犯者にさえなっているという。
この植民地「独立」以来のフランスとアフリカとの歪んだ関係、フランス新植民地主義が現在もなお犯し続けている数々の犯罪は、偶然の所産ではない。それは、フランスの国家としての意思の結果である。


独立戦争を起こしたベトナムやアルジェリアでは拷問、虐待といった残虐行為が日常的になされた。
言うことを聞かないトーゴ大統領は暗殺され(1963年)、カメルーンでは30万人が虐殺された(1958~1964年)。

フランスの友人たちが政権のトップに据えられ、その他の人間は排除された。(略)
自己の権力の維持と、個人的な財産の蓄積にしか関心のない「フランスの友人」を名目的統治者とする事実上の傀儡政権を次々と樹立し、フランスの勢力圏へと再統合する。


独裁者がいるからフランスは勝手なことができ、開発援助と資源によって政財界はうるおうという仕組みである。

現在もアフリカ地域で頻発し続ける内乱の背景には、自らの利権を守り、その国を最も効率よく搾りとるため、自分たちに、もっとも有利な条件を提供してくれる現地の「代理人」を「選び」たいという各組織網の思惑が複雑に絡み合っている。最も有利な条件を提供してくれる代理人とは、すなわち、もっとも腐敗した政権だ。

中南米の独裁国とアメリカの関係と同じだし、他の国も似たり寄ったりなんだろう。

フランスは英語圏のアフリカ諸国にも手を伸ばしている。
アングロ・サクソンに対抗してフランス語圏の縄張りを広げることを目的に、内戦が意図的に引き起こされ、事態が悪化・長期化するよう扇動が行われた。

1967~1970年のビアフラの内戦では、フランスがビアフラを軍事援助したため、飢餓や虐殺で2~300万人の死者が出ている。
ビアフラの飢えた子供たちの写真を新聞で見てショックを受けたが、フランスの暗躍があったとは。

リベリアやシエラレオネの内戦も、フランスが後ろで糸を引いている。

われわれは(アフリカ東海岸の)英語圏の国々に、フランス語圏の国々の未来を決めさせるわけにはいかない。


フランスはウガンダの反政府ゲリラ「神の抵抗軍」に支援しているし、スーダンでは「ウガンダと協力関係にある南部の抵抗勢力をもっと効率的に抹殺できるように支援するため」、スーダン政府のダフルールへの攻撃にも関わっている。

わが国はスーダンの原理主義者に旧ルワンダ体制に対してと同じく「軍事的任務」一式を売却した。


フランスのアングロ・サクソンに対する敵意には利権がからんでいる。
豊富な地下資源に関わる利権を獲得するために文字通り手段を選ばない。
もちろん、利権をあさっているのはフランスだけではない。

1990年代以降、経済のグローバル化―地球規模での野放しの弱肉強食―が進むなかで、アメリカ、イギリス、フランスなどの経済大国、あるいはそれら先進国に本拠を持つ多国籍企業の利害と結びついた組織網が、ありとあらゆる非合法手段を用いて、アフリカをはじめとする貧しい国々を経済的に搾取する。


国と政治家と企業の思惑が一致し、アフリカを搾取し、援助金をだまし取るシステムができている。

世界はアフリカに対して沈黙する。


アフリカ諸国に莫大な経済支援がされているのに、どうしてアフリカはいつまでも貧しいのか。

本来ならば、アフリカ経済を潤し、その社会基盤や衛生環境を整えるために使われるべきそれら巨額の資金は、現地の独裁者や組織網によって、瞬く間に横領され、非合法の回路を使って国外に持ち出される。

政府開発援助のうち、貧困に対する戦いに使われるのは5パーセント以下。
権力の中枢にいる人は政府開発援助から利益を得ている。

たとえば、ザイールのルワンダ難民への援助は、総額25億ドルにのぼると見積もられているが、その相当部分が、まずザイール軍によって横領された。
そして、ザイールの大統領だったモブツは世界一の金持ちになった。
さらに、フツ族の民兵がした戦争努力の一部は、人道援助の資材の売却によってまかなわれた。

大臣や役人どもは、本来飢えた難民にまわされるはずの援助食糧や医薬品をトラックごと横領している。ときに援助組織も見て見ぬふりをしている。(ジョン・ル・カレ『ナイロビの蜂』)。


独裁者やその取り巻きを太らせるだけなのに、なぜ援助するのか。
独裁者が自分のポケットに納めるだけでなく、援助国の政財界に金をばらまく。
さらには、先進国は資源を独占し、政府開発援助の横領し、そうすることで政治家の選挙資金を調達している。

名目上は独立したアフリカの砂地に流し込まれる大量のお金は、旧宗主国フランスを干上がらせるどころか、逆にフランスに豊富な資金を環流させ、フランスの『上流階層』を潤している。


戦争や貧困、飢餓など問題が生じるのは、そのことで利益を得る者がいるからである。
エイズが蔓延するのも、栄養失調で子供が死ぬのも、政治、経済の問題なのである。

援助を受ければ受けるほど、それが、地元の産業の振興につながるどころか、莫大な借金を積みますことになり、一般大衆の貧困と福祉は絶望的な水準にまで悪化する。


何百万という子供たちが栄養失調に苦しみ、病人が薬を買えず、病院や教育システムが滅茶苦茶な状態に置かれている。

第三世界の援助は、別の名を借りた搾取にほかならない。(ジョン・ル・カレ『ナイロビの蜂』)


アフリカでは、援助が有効に使われないほうが援助する側にも援助される側にも都合がいい。

支払い能力のないアフリカの政府の側も、自分たち自身、支払い能力のなさをうまく利用している。支払い能力がないといっても、定期的に財政援助の酸素を送り込まれているわけだから、全く支払いできないわけではない。そうした政府は、自分たちの返したい相手に、返したい時期に、毎回、袖の下と引き替えに返済を行うのだ。


日本のアジア諸国への援助について、吉岡逸夫『漂泊のルワンダ』はこう書いている。

有償であれば、相手の国もいずれ返さねばならないので、本当に自分の国にとって何が必要なのか真剣に考えるようになる。韓国もシンガポールもタイもマレーシアも真剣に考えた末、インフラストラクチャーに多くを投資した。これが効を奏して現在の発展につながったのではないだろうか。

ところが、西欧諸国の援助政策は、日本と違って有償よりも無償援助に重点が置かれている。

援助が常態化してくると、援助なくしては生きられなくなってくる。今のアフリカはほとんどその状態に陥っている。

日本のODAが有効に使われているのか心配になる。

コメント (4)
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