石の虚塔  -発見と捏造、考古学に憑かれた男たち-

2014-11-04 08:56:01 | 日記

上原善広著  新潮社刊

覚えているだろうか? 旧石器時代の化石が次々と発見され、それらを発見した人物が「神の手を持つ男」と騒がれ、後にそれらが捏造されたものだった、と分かった事件を。しかもそれらのどれが捏造されたもので、どれが本物かを確かめるために、日本の考古学が一時ストップした事件である。本書はその事件の主役とも言える二人の男、相澤忠洋と考古学者・芹沢長介を追跡調査したものである。
詳しい経過は本書を読んで欲しい。要するに、これが単なるマニアだけが主人公だったら、「本当かな?」という領域で止まっていた話なのかも知れない。しかし、そこにプロの学者が加わったことが騒ぎになってしまった、ということなのだろう。ここには「研究者というのは、自分の仮定や研究に合った結果が出ると、疑問なく受け入れてしまう」(267頁)という陥穽があったとしか思えない。これは、考古学に限らず他の分野でもあることである。
もうひとつは、ふたりとも「純粋に」飽くことなく日本人のルーツを探し求めていた人物だ、ということだ。つまり、マニアであれ学者であれ、この二つをバランスよく持つことが大切なのだろう。他山の石、とすることだ。


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