中夏文明の誕生 -持続する中国の源を探る-

2013-02-23 14:40:37 | 日記

NHK「中国文明の謎」取材班 著   講談社刊

中国の古代史を遺跡などを元に書かれた本は読んだことがなかった。大抵の本は中国の人のもので、それも多分に思い込みや妄想に基づいたもので、信用できなかった(万里の長城の全長が今も延び続けていくように)。
そういう意味では、本書は遺跡や発掘物を中心に記述されているので、中国文明4000年とか6000年という話も真に迫ってくる。その意味では一般読者向けに書かれた、読み易い本ではないか。
ところで、本書を読んでいて改めて認識したのは、「礼」という言葉である。中国では「礼」とは「儀礼(宮廷儀礼)」を意味している。つまり、服従や隷属を誓った周辺諸国がその証しとして皇帝に貢物を献ずる(朝貢)、それに対して皇帝が褒賞としての文物あるいは地位の保証(礼の金印がよい例)を与えることであって、断じて日本で言う「礼」ではないということである。
これは現在の中国がしている東南アジアやアフリカでの開発援助にも言える。利権(土地や資源)を提供する約束をした場合に限り、資金を提供する(無償の援助はしないし、その国にお金が落ちない場合も多いらしいが)。これも古代から持続している「宮廷儀礼」の伝統ではないか?
もうひとつ。漢字が世界でも稀有な表意文字であることはその通りだが(お蔭で随分助かっている)、だから中国全体を統一するのに重要な鍵を握っていた、というのはややオーバーランではないか? 見た事もない「龍」がどうして周辺諸国の人々に理解できたのだろうか。おそらく、甲骨文字や金石文が根拠だろうが、それが普遍性を持つに至ったプロセスが足りないような気がする。蛇足だが、現代中国の簡易文字はどうなのだろうか。それに本来の漢字を読めない人も多くなっているらしいし。
いろいろ?マークは付くが、一読する価値はあると思う。


コメントを投稿