文士の友情 -吉行淳之介の事など-

2013-08-13 14:50:59 | 日記

安岡章太郎著   新潮社刊

著者の遺稿集。
このところ立て続けにこの世代の遺稿集や特集誌を読んでいるが、なによりも驚くのは彼等が様々な病気に罹患し、闘病生活を送っていることである。それも戦中から敗戦直後の、医療も医薬品も不足不備な時代である。勿論、彼等に限らず多くの人々が同じような状況に在った訳だが、彼等の病歴と闘病の経過を一覧したとしたならば、戦中戦後の医学史の一端が窺えるのではないか、と思ってしまう。
それはさて置き、尽々思ったのは彼等の「日本語・言葉の使い分けに対する執着と深さ」である。親しい作家達が集まって話題になるのは「この単語をどうして使ったのか? 使うべきではなかった! いや、絶妙だった」といったことだった。
日本語は死んだ!! 少なくても私が知っている日本語は! 勿論、言葉が時代につれて変容するものだとは分かっているが…。もうこの後、何人も居ないな。安心して日本語を楽しめる文章を書く人達は……。
因みに本書の装丁は、阿川弘之氏の『鮨』と同じ。当然か。著者は氏の親友であったのだから。新潮社も粋な計らいをする。


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