饗宴外交 -ワインと料理で世界はまわるー

2012-06-01 15:37:55 | 日記

西川 恵著  世界文化社刊

庶民の我々には窺い知れない世界の話であるが、よく考えてみればお客をよべば食事を提供するのは当たり前の話。ただ、料理のメニューが書かれてもさっぱり分からないのは、私が庶民のせいだというだけのことか。
しかし、相手が国家元首だったり、政府首脳だったりすると話は違ってくる。国と国、つまり外交ということになり、対応次第ではたちまち大問題になる。「日本は貴方がたを尊敬しています、ようこそ来日してくれました」という気持を「料理でさり気なく表す」というのだが、これは気骨の折れることだろうと思う。宗教上禁忌の食材もあるだろうし、個人の嗜好もある。フランス料理ならばいいと言うわけではあるまい。だからといって、その国のお国料理だけ出すというわけにもいかない。
随分まえのことだが、大使館や公邸が接待のためのワインや酒類に金を使いすぎる、という批難の声が挙がったことがあったが、提供するワインが微妙な差をつける小道具だとすれば、自ずと豊富な種類の在庫を用意しておかなければならないわけで、批難するわけにもいかない。その事情は庶民の家庭でも変わらない筈だ。
本書で驚いたのは、各国の大使館で働く料理人の給料の低さである。国が支給するのは三分の一。仮に国が考えている全額(わずか24万円)を支給したとしても、それでウンという一流の料理人はいないだろう。差額は大使が自腹を切っているそうである。
料理という特殊技能の持ち主は、外交の上では縁の下の力持ちかも知れないが、立派な公務員なのだから、力量に応じて世間の相場に合った給料を払うべきだと思うのだが……。


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