ジプシーにようこそ!

2011-05-20 14:59:33 | 日記
たかのてるこ著  幻冬社刊

ヒターノ、トラベェラー、ボヘミアン、ツイガン? お察しの通りジプシーの別称で、スペイン、イギリス、フランス、ルーマニアでは彼等はこう呼ばれている。もっとも、現在ではジプシーは蔑称だということで「ロマ」と自称している。
本書は「ジプシーに会いたい! ジプシーの家にホームステイしたい!」と思い立ちルーマニアのジプシー村を訪ねた女性のルポルタージュである。著者は大阪のオバチャン並みの(どうも、そうらしい)パワーで旅を重ねる。
豊富な写真を見ればわかるが、ジプシーの家族は一族でも姿形が全員違っていたりする。世界中を放浪した結果、様々な人種との混血の結果らしい。その暮らしぶりもユニークで、日本人の我々には想像もつかない。ジプシー感が一変する、おもしろい本である。
ただ、ルーマニアが舞台なのが、私には気が重かった。かつてのハンガリー帝国が無理矢理ハンガリーとルーマニアに分割され、その後も二つの大戦で翻弄されつくした。『免疫学の巨人』でも紹介したように、何度も国籍が変わる悲劇を味わった国なのだ。そして、ジプシーはこの両国においてさえも差別されているのだ。インドのカースト制度を嫌って世界に散ったジプシーは、今なお現在も差別され続けている。
人間は、どんな民族でも差別できる人々を必要としているものらしい。哀しいことだが……。

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