知能礼賛  痴愚なんか怖くない

2011-06-28 15:23:52 | 日記
ホセ・A・マリーナ著   近代文藝社刊

著者はスペインの作家・哲学者。正直言って哲学はどちらかと言うと苦手なジャンルで、大学でも辛うじて「可」を取った程度。その私が無謀にも本書を手にしたのは、ひとつにはスペイン出身の哲学者であること(本邦初の翻訳)であったこと、もうひとつは「はしがき」の次の一行に魅かれたことにによる。その一行とは「すべての学校で痴愚の役割が主要科目として教育されて、われわれにーここでの私は楽天的であるー痴愚に対して免疫性を与えられるとすれば、かなりの社会的利益がもたされることだろう」というものであった。著者は痴愚は誤解を招くとして「知能の破綻」といっている。
哲学が、言わば思考の過程を綿密・詳細に吟味し、展開する、その論理的展開に重きをおくことは解っているが、結論は平凡なものだった。
「痴愚の一本調子で、絶えず繰り返される歴史ー錯誤、幻覚、残忍、大量虐殺、貪欲(これらは絶えず新しい錯誤によって生み出される)ーに鑑みて、人類の、したがってまた知能の、勝利の歴史を語ることが予告できよう」。その通りである。
哲学とは、何と持って回ったことをこうもクダクダと記述するのだろうか。と、まぁ、こんな感想をしか持てないから「可」だったのだろうな。
本書のこうした結論を諒とするならば、歴史学者の結論とそう大差はない、と思う。「苦手」とは、「それを理解する能力」欠けている、ということを自覚するべきだった。

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