重力波は歌う  -アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち-

2016-06-28 08:39:21 | 日記

ジャンナ・レヴィン著  早川書房刊

2015年9月、重力波の“音”が確認された、というニュースが発表されたことは記憶に新しい。今年の2月には「重力波の直接観測に初めて成功」という報道もあった(二度目ということ)。
重力波の存在は1915年にアインシュタインが予言したもので、これだけは直接観測で実証されていなかった宿題で、世界中の科学者が挑戦してきた。つまり、相対性理論100周年ぎりぎりで証明されたのである。
重力波については本書に譲る(この重力波は一兆分の一兆分の一より弱いのだ)。この微小なものを、どのような装置を作れば観測できるか。科学者たちの挑戦はここから始まった。著者はこの過程を丁寧に追跡している。我々にお馴染みの科学者たちがたくさん登場する。ここがとてつもなく面白い。
最終的にはワシントンとルイジアナの二ヶ所に、いずれも一辺が4キロメートルのL字形の検出器に落ち着いた(LIGО)。総費用10億ドルを超え、数百人の科学者と技術者が参加する国際的なプロジェクトである。
ここからが、本書の白眉である。誰が統括し、運用するのか? 勿論、科学者、それも重力波に詳しい者でなければならない。しかし、それとこの巨大なプロジェクトを運用する能力とは別物だ。つまり、科学者であることを放棄しなければならない(これがノーベル賞ものであれば、その栄誉も放棄しなければならない)。この葛藤がなんとも言えない。これはどのような場合にも起こるジレンマでもある。
このヒューマンストーリーが読みどころである。著者もブラックホールの現象学のエキスパートでコロンビア大学の教授。ただし、文章はとても読み易いし、難しい数式も図もないので安心してほしい。
とにかく、面白い。


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