はかぼんさんー空蝉風土記ー

2012-09-28 15:31:00 | 日記

さだまさし著  新潮社刊

さだまさしは、私の中ではあくまでも歌手だった。しかも、彼の歌をしっかり聴いたことはない(家人に言わせれば、世代が違うそうだ)。つまり、私は迂闊にも彼が書き手だとは知らなかった。
読んだ第一印象は、見事な書き手だということだった。そして、彼のバックボーンにある博識も生半可ではないことに驚いた。十分楽しんだ。
テーマがいい。正に半村良の世界である。しかも、半村良のように話は異次元、異空間には飛ばない。あくまでも、現時点に止まり、しかも自分が見聞きした範囲に限っている(というか、そう設定している)。
何よりいいのは、不思議なもの・ことを不思議なことだと肯定し、余計な薀蓄や解説を加えていないことだ。多分、読者は「ああ、そう言えば聞いたことがある」と首肯するのではないだろうか。とても歌手の余技とは思えない。次の作品を期待したい。