虐待と微笑 ー裏切られた兵士たちの戦争ー

2012-09-18 15:16:34 | 日記

 

吉岡 攻著  講談社刊

本書は「9・11テロ事件」にまつわる捕虜虐待事件の顛末を書いた本。最後まで読むのは物凄く辛かった。
平和のための戦争だとか、正義のための戦争などと言うのは、戦場に出ない後方の政権や指揮官が言うことで、現実に戦場に立つ兵士にとっては狂気の世界に違いない。大義と狂気が同列だとは言わないが、古代から現代に至るまでこの事実は変わらない。
おそらく人と人の殺しあいの現場にいて、尚平静でいることは到底できないのではないか? それは容認してはいけないが、そうなっても不思議ではない気がする。
本書を読んだのは、イラク戦争の容疑者を収容したグアンタナモとアブグレイブで米軍兵士による捕虜虐待事件は新聞で報道されたものの、その後の結末は報道されなかった。本書のテーマがこれを扱っていたので読むことにした。しかし、兵士が虐待に走ったそもそもの根拠は、米政権上層部が「対テロ戦争の虜囚にジュネーブ条約の権利はない」と断じたことによる。その命令で拷問・虐待に兵士は走ったのだ。だから兵士は無実だとは言わないが、狂気の最中にいる兵士にどこまで理性を求められるか、を考える必要があるのではないか?