ジグザグ山歩き

山歩き、散歩、映画など日々、見たこと、聴いたこと、感じたことなどつれづれに。

小三治のやかんなめ

2014-01-13 15:59:37 | 落語
新宿末廣亭に行った。正月二之席の初日である。混むのを覚悟で家を早めに出たら、京王線が人身事故で運転を見合わせていた。そこで、小田急線の最寄りの駅まで行って、電車に乗る。少し時間がかかったが、前から4番目の席に座ることが出来た。正月興行なので、顔見世興行でたくさんの噺家が登場する。それぞれ噺は短いので、もったいないと思いながら、それなりの味わいもある。端折ってサゲまで辿り着く噺家、盛り上げたままで終わる噺家、漫談で終えてしまう噺家、マクラで盛り上げる噺家など様々である。南京玉すだれや寿獅子や松づくしなど正月にふさわしい興行も多かった。特に、三遊亭歌る多を中心にした女流落語家3人の松づくしは見事であった。花緑が、めでたい話をしたいといって、話をしたのが、昨年、末広亭の八月上席で昼夜の主任を努めたこと。たまたまその日は、昼の主任が正蔵であったが、泰葉の復活コンサートに正蔵が出てしまって、代演を頼まれて、昼夜の主任をすることになったとのこと。これは、圓生以来の30年ぶりの快挙だったと自慢。みんなに話をしてシェアできることがめでたいのであるという。そこに正蔵がラフな格好で登場し、落語を早くやれと言って一言。花緑はその後、「つる」をしっかりと演じる。
 夜の主任は小三治。やかんなめという滑稽噺。枕で、癪と合い薬の解説。江戸時代の病気といえば男は疝気(せんき)、女は癪(しゃく)。癪は種々の病気によって胸部・腹部に起る激痛の通俗的総称。医学が発達してなかった時代、その人の体質に合ったというか、おまじないみたいなもので「合い薬」というのがあった。たとえば女性特有の癪には男のマムシ指で患部を押すとピタリと治るとか、男の下帯、要するにフンドシで体をしばると治るとか、いろいろ迷信めいた治し方があり、これを「合い薬」といった。今は、体の仕組みなどもよく知られるようになってきた。小三治自身、昔の医者より、ずっと体のことは詳しいといっていた。今回のこの噺は、別名「癪の合い薬」という。
 向島に梅見に出かけた商家の奥様が突如、癪を起こして倒れてしまった。この奥様の合い薬はナント「やかんなめ」、つまりやかんをなめればすぐに治るのだが、あいにく持ってきてない。ついてきた女中が困っていると、向こうの方からヤカン頭の侍がお供を連れてやってきた。それを見た女中、奥様のためと侍に駆け寄り「お助けください」。事情を説明して、頭を舐めさせてくださいと必死の懇願。カンカンになって怒った侍は、「武士に対して何ということを。無礼討ちだ」と息巻くが、お供は笑い転げるばかり。このお供とのやり取りを小三治がすると、非常に笑える。そして、「お怒りでしたらどうぞお手討ちになさってください」と必死の思いの女中に侍は、「そこまでいうなら忠義なその方に免じて」と承諾する。やがて、侍が差し出した頭をベロベロ舐めた奥様は全快。治った奥様一行が去ったあと、侍は頭がヒリヒリするというのでお供が見ると、頭には歯形が残っている。お供は「ご安心ください。縫うほどのキズではございません」という。客席の笑いの渦の中に、ゲラゲラ笑う小学生の声が響いた。こういう話は、特に子ども受けがするのかなと思った。今となってはあり得ない馬鹿馬鹿しい話と思ってしまうが、病は気からということもあるので、江戸時代ではさもありなんという話であったのかな。とにかく小三治のやかんなめ、面白く、満足して、末広亭を後にした。


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4 コメント

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Unknown (カモシカ)
2014-01-13 23:33:39
二之席=小三治マークしてましたよ。ただし、沼津から夜の部ラストは厳しい時間帯です。つばささんのレポで聴いた雰囲気に。。今年は、天気もいいので山中心での週末です。
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カモシカさん (つばさ)
2014-01-14 20:30:19
小三治は私もマークをして、初日で行ってきました。昼夜ぶっ通しで聴くので、体力勝負のところもありますが、時々うとうとしていますので、何とか最後まで持ちました。確かに、沼津だと、夜の部最後までいると、9時過ぎですので、きついですよね。でも山に行けたからいいですね。
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Unknown (ケイジ)
2014-03-10 00:35:03
3月9日、行徳ホールで小三治独演会を観る。そこで「やかんなめ」を演じたのだが、オチがここにも出ているように、「縫うほどのキズではございません」だったのだが、どうもこのオチに合点がいかない。そこで、小三治師匠のほかのやかんなめの書かれたものを読んで、合点がいかない理由がわかった。
このオチはこうだった・・・「漏るほどのキズではございません」。

これだと、やかんが「漏る」にひっかけているので合点がいくが、なぜそれを使わず「縫う」にしたのだろうか? 「やかんなめ」でマクラを入れて50分。もうひとつのネタ「錦の袈裟」で40分。
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ケイジさん (つばさ)
2014-03-11 22:59:15
コメントありがとうございます。
確かに、やかんですから、オチは「漏るほどのキズではございません」のほうがしっくりいきますよね。なぜ、「縫う」にしたのかはわかりません。歯型のぎざぎざがついたからでしょうかね。縫うほどではないということで、漏るほどではないと意図しているのでしょうかね。
小三治の二つのネタで、たっぷり90分聴けるとはうらやましい限りです。小三治のチケットは今、なかなか手に入らないですよね。
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