原作は1853年発表の『Twelve Years a Slave』である。監督はスティーヴ・マックイーン。1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然拉致され、南部の奴隷主に売られ12年間ルイジアナ州のプランテーションで奴隷として暮らし、その後解放されるという実話が元にある。奴隷制に後ろめたさを感じている雇い主もいたが、限界はある。奴隷制を当たり前と感じている狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続けるために生きようとした。
ソロモンが、首に縄をかけられたまま爪先立ちの姿勢で放置される場面がある。そんな彼の様子を、白人からはテラスの上から見下され、黒人奴隷からは、見て見ぬふりをされている。ソロモンは、自由証明書を持つ自由黒人。生まれ育ったアメリカ東部では、白人同様の生活を営んでいるが、白人ではない。さりとて黒人奴隷社会の一員でもない。複雑な立ち位置で、孤立感、精神的葛藤と試練を描く。確かにソロモンは12年間で、奴隷からぬけて、自由黒人になったので、夜はあけたのかもしれない。しかし、そのまま悲惨な奴隷社会の中で、奴隷となっている人は夜は明けていないのも事実である。ソロモンの生きざまを通して、自由への希望を持ち続けることや自尊心の大切さを描いていると思うが、と同時に奴隷制における奴隷の絶望的な実態も描かれているため、奴隷制に目を向けると、邦題の「それでも夜は明ける」に、少し違和感を感じるところでもある。そして、その後の奴隷制度廃止後も黒人は人権を得るまでに長い時間がかかっている。また、今日の社会でも、差別と偏見の中で、ソロモンのように自分の人格や知性を隠し、ひたすら頭を低くして今日を生き抜こうとしている人や生きた心地がしないで差別を受けて生きている人が、世界中にまだたくさんいるでしょう。物語の舞台は19世紀アメリカだが、実は現代的な意味もある。一方で、これだけ奴隷制の過去の壮絶な事実を黒人監督のもとで映画化できるようになったのは、時代の変化でもあるのは確かだと思う。米アカデミー作品賞に輝いた。
ソロモンが、首に縄をかけられたまま爪先立ちの姿勢で放置される場面がある。そんな彼の様子を、白人からはテラスの上から見下され、黒人奴隷からは、見て見ぬふりをされている。ソロモンは、自由証明書を持つ自由黒人。生まれ育ったアメリカ東部では、白人同様の生活を営んでいるが、白人ではない。さりとて黒人奴隷社会の一員でもない。複雑な立ち位置で、孤立感、精神的葛藤と試練を描く。確かにソロモンは12年間で、奴隷からぬけて、自由黒人になったので、夜はあけたのかもしれない。しかし、そのまま悲惨な奴隷社会の中で、奴隷となっている人は夜は明けていないのも事実である。ソロモンの生きざまを通して、自由への希望を持ち続けることや自尊心の大切さを描いていると思うが、と同時に奴隷制における奴隷の絶望的な実態も描かれているため、奴隷制に目を向けると、邦題の「それでも夜は明ける」に、少し違和感を感じるところでもある。そして、その後の奴隷制度廃止後も黒人は人権を得るまでに長い時間がかかっている。また、今日の社会でも、差別と偏見の中で、ソロモンのように自分の人格や知性を隠し、ひたすら頭を低くして今日を生き抜こうとしている人や生きた心地がしないで差別を受けて生きている人が、世界中にまだたくさんいるでしょう。物語の舞台は19世紀アメリカだが、実は現代的な意味もある。一方で、これだけ奴隷制の過去の壮絶な事実を黒人監督のもとで映画化できるようになったのは、時代の変化でもあるのは確かだと思う。米アカデミー作品賞に輝いた。