ジグザグ山歩き

山歩き、散歩、映画など日々、見たこと、聴いたこと、感じたことなどつれづれに。

セガンティーニ 光と山

2011-12-22 22:16:13 | 美術館、博物館
 新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「セガンティーニ ―光と山―」展を観た。日本では33年ぶりの開催になるそうだ。この春に開催される予定が、東日本大震災のため延期になっていた。年末に近いこの時期に開かれることになったようだ。12月27日までと開催されるとなっていたので、休暇が取れて、行ってきた。アルプスの山々に抱かれ41歳の若さでこの世を去ったセガンティーニの色々な側面を見ることが出来た。
セガンティーニの画法は短いタッチの色で画面を埋めていく分割法という絵画技法で、分割されている細かな色彩が離れて見ると混ざり合い、明るい発色になるという。細い線を並行に並べた形で、点描法に通じるが、「櫛で描いたようなタッチ」はイタリア独自のものである、ということである。《アルプスの真昼》のような、アルプスの強烈な光に包まれた大自然と人と羊が浮かびあがってみえる。
 このようにジョヴァンニ・セガンティーニ(1858-99年)は、アルプスの風景を描いた画家として知られているが、それだけではない。
 生まれ故郷であるイタリアで活躍した初期は、フランスの画家ミレーに影響を受けた農民生活などを題材にした作品を多く描いている。やがてスイスのアルプスに魅せられ、澄んだ光を求めてより高い山地サヴォニンに転居しながら、雄大なアルプスを舞台にした写実的な作品に取り組む。新印象派風の明るい色彩技法もこの頃に確立した。さらにより高地となるエンガディン地方マローヤに移り住み、エンガディン地方やブレガリア谷の山々に囲まれた谷を舞台に、象徴主義的な母性・生・死などのテーマを融合させながら、多くの代表的な作品を描いた晩年。それぞれの時代から厳選した作品や、肖像画、自画像などの作品を通して、今回の展覧会は、画家の全貌を紹介する回顧展となっているとのことである。なかなか見応えのある作品が並んでいた。この美術館にはゴッホの「ひまわり」なども展示されていた。満足して美術館を出る。

50/50 フィフティ・フィフティ

2011-12-15 10:49:32 | 映画
酒もたばこもやらない27歳のアダム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、ある日突然、5年後の生存率が50パーセントのがんであることを宣告される。戸惑いながらも、前向きに闘病生活に向かう姿を描いたヒューマンドラマ。新鋭ジョナサン・レヴィン監督がユーモラスに描き出す。脚本家のウィル・ライザーの実体験がもとになっていて、アダムの悪友役はコメディ俳優のセス・ローゲンが演じ、実際に脚本家の友人として同じ苦難を共にした人物である。そういうわけで描かれる幾多の心情は、きわめて高いリアリティーを持っているともいえる。闘病映画ではあるが、優れたコメディーになっている点はさすが、映画大国アメリカである。日本では難病物のお涙頂戴式の映画が多く、それとは違っている。実際、癌は辛いが、奇妙でおかしいこともつきまとうと脚本を書いたウィルは語っている。同僚や恋人、家族は病気を気づかってどこかよそよそしくなっていくなか、悪友カイルだけはガンをネタにナンパに連れ出すなど、いつも通りに接してくれていた。のっぴきならない悲劇の中だというのに、それを笑い飛ばす不謹慎さがありながら、病気も悪くないといったように、ポジティブな考え方にもさせてくれる。そして、寄り添うだけでも勇気付けられるのである。病気は苦しいが、マイナスだけではなく、命の尊さ、人との関係を大切にしたり、生きる気づきも与えてくれる。もちろん、不条理な病への憎しみや葛藤なども描かれているが、悲壮感を漂わせるだけではなく、あくまで楽しんで、笑いのある生き方も大切であると訴えているようにも思えた。観終わったあと元気が出てくる映画でもある。