ジグザグ山歩き

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チューリヒ美術館展

2014-11-09 17:06:26 | 美術館、博物館
 チューリヒ美術館展が国立新美術館(六本木)で開かれていたので、観に行ってきた。スイスが誇る美の殿堂チューリヒ美術館。18世紀末にチューリヒの町の芸術家や鑑定家たちが立ち上げた小さな集まりに端を発し、積極的な作品購入とコレクターからの寄贈に支えられ、現在、2万人のチューリヒ芸術協会の会員に支えられている。中世美術から現代アートまで10万点以上の作品を所蔵している。本展ではチューリヒ美術館の近代美術コレクションから74点を紹介。印象派を代表するモネの大作、セザンヌ、ゴーギャン、ルソーらポスト印象派の代表作や、ホドラー、ヴァロットン、クレー、ジャコメッティといったスイスゆかりの作家の珠玉の作品、カンディンスキーやモンドリアンら抽象画家の名作、さらにはムンク、マティス、シャガール、ピカソ、ミロといった20世紀美術の巨匠の作品など、まさに「すべてが代表作」といえる作品が並んでいる。会場は、ムンクやシャガールなど一人の芸術家を特集した「巨匠の部屋」が8室と、表現主義やシュルレアリスムなど美術運動を紹介する「時代の部屋」が6室、計14室を交互に辿る、珍しい構成となっている。「巨匠の部屋」では、出品されているのは幅6メートルにおよぶモネの大作《睡蓮の池、夕暮れ》は見どころである。また、初期から晩年まで各時代のシャガールの代表作6点が展示されている部屋も、特に印象に残った。セガンティー、ホドラー、ヴァロットン、ココシュカ、クレー、ジャコメッティなどスイスゆかりの巨匠の部屋もあり、まとめてみられる貴重な機会であった。ホドラーは左右対称にものを描く(パラレリズム)が特徴である。人物や風景など対象に合わせて輪郭の描き方も変えていて、独特な輪郭の描き方をしている。ヴァロットンは冷静に対象物を描いた画家で、イメージでいうと一瞬一瞬の場面を描いているようである。ヴァロットンは輪郭よりも、色使いで対象物をきちんと描いた画家といわれる。ココシュカは表現主義(感情を作品に反映させて描く事をいう)の画家と言われているが、元々詩人的感性もあってか、独自の道を進んだ画家といわれている。「時代の部屋」では、セザンヌの傑作《サント=ヴィクトワール山》をはじめ、ファン・ゴッホ、ルソーなどのポスト印象派の部屋、ピカソとマティスの対比が際立つキュビスムとフォーヴィスムの部屋、ミロ、ダリ、キリコ、マグリットのシュルレアリスムの部屋まで近代美術の歴史を一気に紹介している。今回の展覧会の流れとして、対象物を描くことからはじまり、印象派のように対象物を自分の感覚で描く様になり、そして、表現主義のように対象物の内面を描くことを目指していった。さらに、抽象絵画や近代絵画など抽象的な表現をするようになっていったともみれるようである。
 世界的な金融都市でもあるチューリヒの富と、スイスの人々の美への慧眼を象徴するようなチューリヒ美術館展は、日本とスイスの国交樹立150年を記念する展覧会でもある。2017年には新館を完成させて、スイス最大の美術館となるそうである。