おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく

2024-04-30 07:12:06 | 映画
「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」 1978年 日本


監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 木の実ナナ 下絛正巳 三崎千恵子
   前田吟 太宰久雄 笠智衆 佐藤蛾次郎 竜雷太 犬塚弘

ストーリー
初夏の景色でいっぱいの柴又に、例によってブラッと寅が戻ってきた。
風邪で寝込んでいたおいちゃん、その寅に「俺も年だ、店を継いでもらえたら……」と一言。
「俺だってそれは考えている」と寅も無理して言うが、それからいつものように調子に乗ってバカを続けてしまう。
みんなに馬鹿にされて、寅はまた柴又を後にする。
九州は肥後の温泉にやってきた寅は、そこで後藤留吉という若者と知り合った。
幼ななじみの芋娘に振られてガックリしていたところを寅に励まされた留吉は寅を気に入ってしまった。
寅もつい長逗留してしまい、宿代もたまってしまい、さくらにSOSの手紙を書くのである。
久しぶりに柴又に戻ってきた寅をみんなは大歓迎した。
その時、紅奈々子がさくらを訪ねてきた。
彼女はさくらの学生時代の同級生で、二人ともSKDに入るのが夢だった。
今、SKDの花形スターになった奈々子を知った寅は理由をつけては浅草国際劇場に通いはじめた。
梅雨に入る頃、留吉が上京してきた。
国際劇場に案内された留吉は、踊り子の富士しのぶに一目惚れしてしまう。
留吉は浅草に残り、トンカツ屋に就職して、国際劇場専門の出前持になってしまった。
梅雨が明ける頃、奈々子はまたさくらを訪ねてきた。
彼女は照明係の男に恋をしており、結婚するか、舞台ひと筋に生きるかを、さくらに相談に来たのである。
愛をえらんだ奈々子の最後の舞台「夏の踊り」の初日、満員の国際劇場の二階の最後列で、むなしく失恋した寅は彼女の晴れ姿を見た。
奈々子の大きな眼にあふれる涙が輝いていた。
しのぶにふられて、泣く泣く故郷に帰った留吉を励ましに、寅はまた旅に出るのである。


寸評
寅さんを「お兄ちゃん」と呼んだのは、妹のさくらと本作の紅奈々子以外にいない。
紅奈々子はSKDの踊り子で非常に賑やかな女だ。
例によって寅さんは紅奈々子にゾッコンとなるが、彼女は結婚問題で悩んでいた。
ダンサーの道を歩むか、好きな男との結婚を取るかの二者択一なのだが、彼女は結婚を諦め一度はダンサーの道を選択する。
寅さんはガッカリしたり、再び希望を持ったりと右往左往するが、隣の社長は「逆転打を打たれたピッチャーみたいだ」とか、「とんだ逆転劇だ」とか言って、寅さんの恋模様を楽しんでいるようでもある。
結局彼女は結婚を選び、引退のステージでそれまでのことを歌った「道」を披露する。
紅奈々子を演じた木の実ナナはダンスも上手いし、歌も上手い。
結構長いフレーズを歌う木の実ナナは決まっていた。

しかし、思うのである。
なぜ二者択一なのか?
たしかに紅奈々子の体力は落ち来ていて練習もきつそうだし、彼女自身が言うように若い子たちと比較すると、体の張りも違ってきているのだろう。
あるいはSKDや宝塚には、結婚すれば引退の不文律が存在しているのかもしれない。
それでも今の時代、二者択一はないだろうと思うのだ。
寅さんはしみじみと言う。
「ダンサーをやめない方がいいんじゃないかなあ・・・。俺ならそんなことはさせないけどなあ・・・」と。
結婚=退職はそこいらの会社がやっていることではないか。
優秀な女性、能力を持った女性、才能を持った女性が結婚と引き換えに築き上げたものを棄てる必要はない。
メッセージ性を持っているのも映画なのだから、ここは紅奈々子に結婚後も頑張らせて良かったのではないか。
第一、SKD出身の倍賞千恵子が頑張っているではないか。

寅さんは九州は肥後の温泉町で農業を営む留吉と出会うが、この留吉を演じているのが武田鉄矢である。
武田鉄矢は前年の「幸福の黄色いハンカチ」で映画デビューを飾り、その軽薄な演技が注目された。
ここでもそのキャラクターを引き継いで軽妙な役柄を演じている。
留吉は寅さんと同じで、女の子に恋をしてはフラれているからっきしダメな男である。
女性に関しては同じような対場なのだが、寅さんと違って為吉は積極的である。
女の子の気を引くためのプレゼントをし、あるいは直接告白もする。
あわよくば事に及ぼうともするので、好きな女性に対してとる行動は寅さんとは対極にある。
留吉に同じくSKDの若いダンサーしのぶをアタックさせて、その対比を際立たせていた。

寅さんが引退ステージの紅奈々子を遠く二階席から見ているシーンは胸を打つし、見届けると途中で退席して劇場を後にするのもよかったなあ。
最後のオチは読めたけど・・・。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿