おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

昭和残侠伝 血染の唐獅子

2024-05-21 06:53:05 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2019/11/21は「デトロイト」で、以下「天使のはらわた 赤い教室」「転校生」「天国と地獄」「天然コケッコー」「ナイル殺人事件」「永い言い訳」「中山七里」「嘆きのピエタ」「ナチュラル」と続きました。

シリーズの最高傑作「「昭和残侠伝 死んで貰います」はバックナンバーから19-08-05をご覧ください。

「昭和残侠伝 血染の唐獅子」 1967年 日本


監督 マキノ雅弘
出演 高倉健 藤純子 池部良 津川雅彦 曽根晴美
   山城新伍 牧紀子 萩玲子 宮城千賀子 清川虹子
   天津敏 加藤嘉 水島道太郎 金子信雄 河津清三郎

ストーリー
昭和初期。浅草界隈の左官、大工をまとめ信望を一身に集める鳶政(加藤嘉)は、今は病身で、小頭の秀次郎(高倉健)が兵役から帰還してくるのを待っていた。
そうした時、東京で博覧会が開かれることになり、会場が上野に決った。
上野は鳶政の縄張りだったが、博徒の阿久津(河津清三郎)が子分の三日仏(天津敏)と共に札束をつんで工事の利権を譲れと言ってきた。
これを断った鳶政だったが病に倒れてしまう。
阿久津は、市の土木局長高見沢(金子信雄)と結託し、鳶政傘下の業者を買収してしまった。
そんなやり方に、阿久津組の代貸し重吉(池部良)とその妹文代(藤純子)は心を痛めていた。
重吉は秀次郎とは親友だった。
やがて秀次郎が帰ってきた。
そして入札は無事に鳶政一家に落ち、会場建設の大工事が始まった。
そんな時、音吉(山城新伍)が芸者染次(牧紀子)を身請けするため大切な纒を質屋の岩源(沢彰謙)に渡し、それが阿久津の手に渡るという事件が起った。
音吉は責任を感じそれを取り返しに行って殺され、染次も阿久津に身を売る約束で纒を取返したが、音吉の後を追って死んだ。
秀次郎たちは阿久津への激しい怒りを抑え、今は工事の方が大切と会場建設に全力を注ぐのだった。
しかし阿久津たちはそんな鳶政一家に次々と工事の妨害を仕かけてきた。
一方、度重なる阿久津の悪どいやり方に重吉は盃を叩き返し、秀次郎の許に駆けつけた。
ちょうど秀次郎は、鳶政のひとり息子明夫(小林勝彦)や組員たちを制し、自分で行こうとしていた。
秀次郎と重吉にお坊主竹(津川雅彦)が加わり阿久津一家に殴り込んだ。
三人は思う存分暴れ回り、たちまち修羅場と化したが、その中で重吉が三日仏に殺された。


寸評
昭和残侠伝シリーズは、1965年から1972年にかけて制作されたヤクザ映画シリーズだ。
第1作の「昭和残侠伝」から、「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」、「昭和残侠伝 一匹狼」、「昭和残侠伝 血染の唐獅子」、「昭和残侠伝 唐獅子仁義」、「昭和残侠伝 人斬り唐獅子」、「昭和残侠伝 死んで貰います」、「昭和残侠伝 吼えろ唐獅子」、「昭和残侠伝 破れ傘」と9作品が撮られたのだが、シリーズの中では第7作の「昭和残侠伝 死んで貰います」が出色の出来栄えであったが、4作目となる本作もマキノ雅弘が手堅くまとめていると思う。

秀次郎は兵役から帰ってくるが、その前はどのような状態だったのかはわからず、人間関係は想像するしかない部分があって描き方は少し弱く、       鈴木則文と鳥居元宏の脚本に工夫があっても良かったように思う。
芸者の染次は秀次郎に想いを寄せているようだが、文代を含めた三角関係のなりたちがよくわからない。
吃音症の竹は秀次郎を心酔していて、秀次郎も竹をことさら目にかけている。
鳶政一家には水島道太郎の聖天の五郎もいるのだが、彼を差し置いてなぜ竹なのかも不明である。
秀次郎と重吉は幼なじみであることもあって、重吉は阿久津から破門されてしまう。
阿久津が重吉を殺そうとしたことで、重吉は元の親分に殴り込みをかけることになるのだが、彼はヤクザ世界の義理に悩むことはない。
脇を固めるストーリーの薄弱なことが、最後の道行の盛り上がりを欠く原因になっていたように思う。

博覧会の土木工事が入札によって決められることになり官製談合が描かれるのだが、手口は無茶苦茶である。
悪役の常連である金子信雄が糾弾されないのは政治家の逃げ切り上手を描いていたのかな。
染次の顛末はグッとくる。
染次は秀次郎を想いながらも最後には音吉の情にほだされたのだろう。
音吉の気持ちを知りながら、自分の本当の気持ちを伝えようとしているうちに音吉は死んでしまう。
染次は阿久津に身を売り纏を取り返すが、彼女は音吉への義理と人情から入水したのだろう。
染次の遺体を阿久津の元へ運んでいき、秀次郎が「奥さんをお返しします」と言い、運んできた組員たちが遺体に向かって「有難うございました」と礼を言う場面に感動する。
もちろん見せ場は最後の殴り込みだ。
秀次郎と重吉の道行は最初から二人連れである。
そこに事情を察した竹が加わり、秀次郎と重吉はそれを咎めず三人での殴り込みとなる。
盛り上がりには欠けるが、竹が吃音にならずに切るタンカが小気味よい。
文代が直前に涙ながらに引き留め、そして送り出した経緯があるので、最後に秀次郎へかける文代の無言の様子が決まっている。
マキノはシリーズで3作を担当したが、昭和残侠伝のスピリットを自身として最後の1本に集約したのだろう。
僕がこの映画を評価する点は河津清三郎が演じる阿久津のキャラクター設定だ。
善玉ヤクザである池部良の風間重吉が手ほどきを受けた親分だから、かつては立派な親分だったに違いない。
ところが阿久津は時代の流れで金に目がくらむ強欲な親分になり下がってしまっている。
それはまるでバブルに踊って分不相応な借金を重ね身動きが取れなくなったどこかの会社の姿そのもので、改めて見返すと時代を予見していたように思えることである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿