おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

GONIN サーガ

2024-05-15 06:20:56 | 映画
「GONIN サーガ」 2015年 日本


監督 石井隆
出演 東出昌大 桐谷健太 土屋アンナ 柄本佑
   安藤政信 テリー伊藤 井上晴美 りりィ
   福島リラ 松本若菜 菅田俊 井坂俊哉
   根津甚八 鶴見辰吾 佐藤浩市 竹中直人

ストーリー
大越組襲撃事件から19年後、大越組の若頭だった久松茂の息子、久松勇人(東出昌大)は母(井上晴美)と共に真っ当な人生を歩んでいたが、大越組の組長の息子、大越大輔(桐谷健太)は五誠会会長の孫である式根誠司(安藤政信)に振り回されていた。
式根誠司の愛人である菊池麻美(土屋アンナ)は、五誠会の隠し金を奪うことを大越に提案する。
19年前の事件を追うルポライターの富田慶一(柄本佑)は、情報を集める為に、勇人の母である安恵に情報を与えたところ、安恵は久松茂の名誉回復のため五誠会に突撃するものの、始末されてしまう。
慶一は、安恵に行動させてしまったのは自分のせいということで、勇人と大輔に隠し金の強奪計画を話し、勇人と大輔はそれに参加し、麻実の協力もあり、強奪計画は成功した。
誠司の父である式根隆誠(テリー伊藤)は、報復の為ヒットマンの明神(竹中直人)と女殺し屋の余市(福島リラ)を雇い慶一を殺害しようとするが、大輔により阻止され明神はビルの屋上から突き落とされた。
麻実は余市に反撃して殺害に成功し何とか逃げ出した。
慶一は勇人と大輔をとある病院に案内したが、そこには大越組襲撃事件に関わり、植物状態で生きていた氷頭要(根津甚八)がいた。
慶一は氷頭も含め、誠司の結婚式を襲撃しようと計画するが大輔は自身の父を殺した氷頭を殺しにかかる。
しかし慶一が「紅い花」を流しそれを聴いた氷頭は目を覚まし計画に参加した。
麻実も計画に参加し、自身が大越組襲撃事件の主犯格である万代樹彦(佐藤浩市)の娘ということを明かす。
誠司の結婚式の日、会場に式根隆誠と誠司が現れたことを確認し、勇人達は銃撃を開始した。


寸評
傑作だった「GONIN」の19年ぶりの続編である。
19年ぶりとなると、前作を知らないでこの作品を見る観客もいるわけで、そのような人は前作のあらすじだけでも頭に入れておいた方がよいだろう。
前作の回想シーンから「GONIN サーガ」は始まるが、やはり背景はわかりづらい。
どうやら今回のテーマは「復讐」なのだと分かってくる。
桐谷健太と東出昌大が演じるのは、前作で氷頭達によって壊滅した大越組の、組長と若頭の息子達だ。
彼らは、富田慶一と名乗る抗争のとばっちりを受けて殉職した警察官の息子と、元アイドルで五誠会に囲われている情婦の麻美の誘いに乗って、五誠会の隠し資金を奪う計画を立てる。
彼らの襲撃シーンは、前作の襲撃シーンを意識して似たような描き方をしているなど工夫がなされているが、如何せん前作に比べればキャストの小粒感が否めない。
五誠会の二代目がテリー伊藤なのも笑ってしまうキャスティングで迫力はない。
佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平、ビートたけし、鶴見辰吾、永島敏行、室田日出男とそろった前作はスタイリッシュな描き方と相まって凄かった。
今回、竹中直人はヒットマンの明神として登場しているが、凄みよりも滑稽さが先に出てしまっているのは彼本来のキャラクターによるものだろう。

前作のメンバーはそれぞれが事情を抱えていたのだが、今回は遺児たちの復讐劇というシンプルなものに絞られている。
場面場面ではハッとするような映像表現があるので、分からない内にも引き込まれて行き最後まで見てしまう力強さは健在である。
撃れても撃れても、なかなか死なないのはこの作品らしい。
相手側はすぐに死んでしまうのに主人公はなかなか死なないのはヒーローものによく見られることである。
「GONIN サーガ」では相手側もなかなか死なずにしぶとい。
明神があの状態でも死なず、余市の首を持ってやって来るなんてマンガの世界である。

金を奪われた二代目の安藤政信が咎めを受ける場面は面白い。
ヤクザ映画ならヘマを責められ殺されるか、指を詰めることになるのだが、ここでは笑えるような始末の付け方であるのだが、それが安藤政信の最後への伏線となっている。
彼らは復讐の機会を狙って床下に何日も潜んでいる。
やがて階上では三代目の結婚披露宴が行われ、参加者はダンスに興じる。
この作品の制作年度は2015年で、世の中は格差社会がどんどん広がっている頃である。
階下に潜む彼らは格差社会に反撃したとも見て取れる。
実生活における余命が残り少なくなっていた根津甚八が前作の生き残りとして意外な姿で登場する。
彼も加えて5人なのだろうけど、それにしても根津甚八の風貌はすっかり変わっていて、僕はその事の方が胸に迫ってくるものがあった。
根津甚八はこれが遺作となってしまった。


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