おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

男はつらいよ 葛飾立志篇

2024-04-29 08:03:36 | 映画
「男はつらいよ 葛飾立志篇」 1975年 日本


監督 山田洋次
出演 渥美清 倍賞千恵子 樫山文枝 下絛正巳 三崎千恵子
   前田吟 太宰久雄 笠智衆 桜田淳子 中村はやと
   佐藤蛾次郎 米倉斉加年 大滝秀治 後藤泰子 谷よしの
   戸川美子 吉田義夫 小林桂樹

ストーリー
秋も深まったある日の午後、数カ月ぶりに寅は“とらや”に帰って来た。
ところが、そこには山形から修学旅行で上京したついでに寅を訪ねに来ていた高校2年の順子がいた。
寅は彼女を見るなり、おもわず「お雪さん!」と叫び、順子は目に涙をため「お父さん!」と叫んだ。
実は順子は寅が17年前に恋焦がれた人--お雪の娘だったのだ。
寅は毎年正月になると少しの金を添えて手紙を送っていたので、順子は、寅を本当の父親と勘違いしていたのだった。
そのお雪がつい最近死んだと聞き、寅は歳月の流れをしみじみと感じた。
とらやの人々がホッとしたのも束の間、「寅がまともに結婚していたらこの位の娘がいるのになあ」と愚痴るおいちゃんの言葉が原因で、怒った寅はまた旅に出てしまった。
数日後、寅はお雪の墓参りを兼ねて、山形を訪ねた。
そこで寅は、寺の住職から、お雪の生前の不幸を聞かされた。
彼女は学問がなかったために男に騙されたのだった。
そして住職は、学問の必要な事を寅に教え、寅も晩学を決意した。
一方、とらやでは、御前様の親戚で大学の考古学教室に残り勉強を続けている筧礼子が下宿することになったのだが、そんなところへ寅が帰って来た。
明るく誰とでも気軽に口をきき、インテリぶらない礼子に、寅は次第に惹かれていき、勉強の方も彼女に教えてもらいながら真面目につづけた。
また、礼子の恩師である、奇人だが天才肌の田所博士をも寅はすっかり気に入ってしまった。
そんな寅がまた礼子に振られてしまうと心配したさくらだったが、寅は「礼子さんに色恋を感じたら失礼だ。彼女はもっと高い事を考えている人で、結婚なんかするはずがない」と答えたのだが・・・。


寸評
今回は珍しいことが二つある。
一つ目は寅さんが足長おじさんをやっていたことだ。
毎年の正月にお雪さんという女性に、子供の学資にと手紙を添えてお金を送っていた事実が明かされる。
子供が大きくなり、順子と名乗る女子高生が修学旅行に来たついでに「とらや」を訪れる。
寅さんと出会い「お父さん」と呼ぶから大騒ぎである。
貧乏暮らしを続けている寅が送っていたお金は500円札一枚だったことがわかり、父親と思っていたのは順子の勘違いだったことも判明するのだが、この順子を演じているのが歌手の桜田淳子である。
寅さんはよく片思いをし、よく振られるのだが、別れた女性をいつまでも気に掛けていたことがうかがえる。
足長おじさんは形を変えてよく映画で用いられる話だが、実の父親と思って訪ねてきた順子が、父親ではないと知った時の後始末が予想外にあっさりとしている。
シリアスにしすぎると重たくなってしまうからなのだろうが、ここではもっと泣きたかった。

お雪の墓参りをし、そこで学問の重要さを感じて葛飾に帰ってきた寅は喫茶店で「とらや」に下宿している礼子と出会うのだが、それが考古学の勉強をしているという設定の樫山文枝である。
僕たちの年代の者にとってはNHKの朝ドラ「おはなはん」のイメージが飛びぬけている女優さんだ。
「おはなはん」はNHK連続テレビ小説、通称朝ドラ初期の大ヒット作で、放送が始まると水道の使用量が激減したと言われている伝説のドラマだ。

例によって寅が礼子に熱を上げる騒動が持ち上がるのだが、今回は礼子に社会科の家庭教師役を買ってもらっていて、その勉強ぶりが可笑しい。
特に卑弥呼から大和朝廷の話になり、日本の始まりだとの説明を受けると、寅が「それ、知っている」と俄然元気になるくだりが愉快だ。
それは寅さんお得意の口上だったのだ。
「国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島、泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、助平の始まりが小平の義雄、続いた数字が二、仁吉が通る東海道、憎まれ小僧が世に憚る。仁木の弾正はお芝居の上での憎まれ役。三、三、六歩で引け目がない。産で死んだが三島のおせん。おせんばかりがおなごじゃないよ」というものだ。
さらに、「四角四面は豆腐屋の娘、色が白いが水臭い。四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れるお茶の水、粋な姐ちゃん立ちションベン」と続く小気味よいものである。

熱を上げ始めたところでマドンナの本当の相手が現れるのが通例で、今回はそれが小林桂樹の田所博士となるのだが、この先生意外とさばけていて寅さんと気が合いそうなキャラクターとして登場してくる。
珍しいのは、田所博士から告白を受けた礼子がその申し出を断ってしまうことだ。
結婚すると早とちりした寅はいつものように一人淋しく旅立ってしまうのである。
さくらが後を追うが間に合わず電車は出てしまう。
どこまでもおっちょこちょいな寅さんなのだが、その後始末処理はなかなか愉快でほっこりさせてくれた。
礼子さんはどうなったか分からない。


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