おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

カリートの道

2024-05-06 08:36:44 | 映画
「カリートの道」 1993年 アメリカ


監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 アル・パチーノ ショーン・ペン
   ペネロープ・アン・ミラー ジョン・レグイザモ
   イングリッド・ロジャース ルイス・ガスマン
   ヴィゴ・モーテンセン エイドリアン・パスダー

ストーリー
1975年、ニューヨーク。カリート・ブリガンテ(アル・パチーノ)は、組織のお抱え弁護士クレインフェルド(ショーン・ペン)の尽力で、30年の刑期を5年で終えて出所した。
かつては麻薬王としてならした彼も、今度こそ足を洗い、バハマのパラダイス・アイランドでレンタカー屋を営むことを夢見ていた。
だが、従兄弟の麻薬取引のトラブルに巻き込まれたカリートは、心ならずも手を血で染める。
彼は昔なじみのサッソ(ホルヘ・ポルセル)のディスコに、死んだ従兄弟の金を投資し、儲けを貯め始める。
街はすっかり様変わりし、信頼していた仲間のラリーン(ヴィーゴ・モーテンセン)は検事の手先となって偵察にきたうえ、チンピラのベニー・ブランコ(ジョン・レグイザモ)がのしていた。
昔の恋人であるダンサーのゲイル(ペネロープ・アン・ミラー)と再会したカリートは、彼女への愛に生きることを誓う。
その頃、コカインと汚れた金に溺れていたクレインフェルドは服役中のマフィアのボス、トニー(フランク・ミヌッチ)に脅されて脱獄の手引きをさせられるのだが、彼に恩義があるカリートは断りきれずに手を貸すことになった。
だがクレインフェルドは深夜のイーストリヴァーで、脱獄したトニーとその息子フランクを殺したことで、二人はマフィアに命を狙われることになる。
一方、ノーウォーク検事(ジェームズ・レブホーン)はカリートに、クレインフェルドの犯行を証言すれば免罪にすると司法取引を持ちかけ、検事は、彼がカリートをハメようと虚偽の証言をしたテープを聞かせた。
カリートは取引に応じず、裏切り者のクレインフェルドをマフィアに殺させるように仕向けてカタをつけた。
ゲイルと落ち合うグランド・セントラル駅へ急ぐカリートは、追って来たトニーのもう一人の息子ヴィニー(ジョゼフ・シラーヴォ)一味と構内で壮絶な銃撃戦を演じる。
追撃を逃れたカリートが待ち受けるゲイルと列車に乗り込もうとした瞬間、一人の男が現れた。


寸評
カリートが友人の弁護士クレインフェルドの力によって、30年の刑期を5年で出所してくる。
その間にチンピラだった男が顔役になっていたが、カリートはその男を殴り倒す。
カリートはかつての恋人ゲイルと再会を果たす。
堅気になる気でいたカリートだったが、クレインフェルドのもめ事に巻き込まれてしまい、命を狙われることになってしまう。
エピソードの主なものは以上のようなもので、補足的にカリートの独白が所々に入る。
僕はこの独白が作品の緊張感を削いでいるし、テンポを緩めていると感じている。

映画は誰かに撃たれて死の間際にいるカリートの独白から始まるから、作品はそこに至るまでが描かれるのだと分かる。
そして割と早い時期のカリートの独白によって、カリートが誰に撃たれたのか想像できてしまう。
クレインフェルドが服役中のマフィアのボスに脅されて脱獄を手助けせざるを得ない理由も想像できてしまう。
盛り上がりに欠ける単調な描き方は狙ったものかもしれないが、やはりノワール物としては淋しい気がする。
渋さがあると言ってしまえばそれまでなのだが、それを支えているのはアル・パチーノの存在感とショーン・ペンの狂人ぶりである。
とくにショーン・ペンの弁護士が汚れた金に溺れて薬物中毒になっている男として、特異なヘアスタイルもあって際立った存在を見せている。

前半のまったりとした展開に比べ、ラストに至る流れは豹変する。
病院にいる偽警官に対するカリートの独白がはいるものの、その男を利用してカリートは裏切った男への後始末を行い待ち合わせの駅に向かう。
ここから始まるカリートを狙うマフィアたちとの追っかけごっこは見応えがある。
先ずは電車内でカリートが追い詰められていくのだが、乗客となった警官を利用して脱出する。
そこからは待ち合わせている駅構内での逃亡劇でリアル感があり、エスカレーターを使った逃亡と銃撃戦も魅せるものがある。
電車内では役立たずだった肥満の男が、肥満ゆえの効果をもたらすのも納得させる。
そして究極の裏切りと顛末へとつながっていく展開はスピード感がある。
この小気味よさを最初から出せなかったものかと思うと、少々残念な思いが生じる。

刑務所からマフィアのボスが脱走する場面はないし、マフィア同士の結束の強さも描かれていないことも緊張感を和らげているように思う。
駅にいた警官たちは、その後どんな動きをしたのかもわからず、ラストシーンとして冒頭のシーンに戻る。
パラダイスで踊るシルエットはカリートが見たゲイルの幻影だったのだろう。
上手く撮れば心に残る作品になっていたような気がするが、それでも名優二人が最後まで僕を引っ張ってくれたことで最後まで見ることが出来た。