おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

THE 有頂天ホテル

2023-11-09 07:30:45 | 映画
「THE 有頂天ホテル」 2005年 日本


監督 三谷幸喜
出演 役所広司 松たか子 佐藤浩市 香取慎吾 篠原涼子
   戸田恵子 生瀬勝久 麻生久美子 YOU オダギリジョー
   角野卓造 寺島進 浅野和之 近藤芳正 川平慈英
   堀内敬子 梶原善 田中直樹 八木亜希子 原田美枝子
   唐沢寿明 津川雅彦 伊東四朗 西田敏行

ストーリー
大晦日。高級ホテル・アバンティは新年を迎えるカウントダウンイベントを控えて賑わっていた。
歌手に成る事を夢見、このホテルでベルボーイのアルバイトをしていた憲二(香取慎吾)は、夢を諦めて明日故郷へ帰ろうと決めていた。
客室係のハナ(松たか子)はシングルマザーとして一人息子を育てていたが、母親としての自覚を未だ持てずにいるのだが、息子の父親は汚職事件で世間を騒がしている国会議員・武藤田(佐藤浩市)であった。
ホテルの副支配人である新堂(役所広司)はこの日たまたまホテルに宿泊していた元妻・由美(原田美枝子)と再会し、自分も宿泊客であり、今晩ホテルで行なわれる“ステージマン・オブ・ザ・イヤー”の表彰パーティーに招かれたのだと言ってしまう。
カウントダウンイベントに出演予定の歌手・桜チェリー(YOU)は、所属事務所の社長に歌いたくない歌を押し付けられ、事務所の為に顧客と寝る事をも強要されていた。
汚職疑惑の渦中にいる武藤田は、このホテルに身を隠している事をマスコミに嗅ぎ付けられてしまい、政治家としての進退を迫られていた。
自室で思い詰めていた武藤田は、自殺を決心して銃に手をかけたが、隣部屋から憲二が宿泊客に頼まれて歌っていた能天気な歌が聞こえて来て思いとどまる。
客には才能が無いから歌なんてやめろと言われる憲二だが、武藤田には良い歌だとほめられる。
憲二は歌が歌えるだけ幸せじゃないかと桜チェリーを叱咤激励し、新堂はホテルマンとして武藤田をマスコミから守り切る事に成功する。


寸評
都内の高級ホテル“ホテル・アバンティ”を舞台としたグランド・ホテル形式の群像劇で、映画「グランド・ホテル」に引っかけた小ネタも披露される。
一つの場所に集う人々の人間性を描くグランド・ホテル形式の映画は、ネーミングの元となった作品以来幾度となく制作されてきたが、この作品はその形態をとりながらも随分と喜劇的である。
三谷幸喜は物語を通じて深く人間を追及すると言うよりは、ストーリーテイラーとしての才能を発揮する監督だ。
ここでもその才能を開花させて、次から次へとギャグを繰り出しながら話を紡いでいく。
よくもまあこれだけアイデアを出せるものだと思うし、監督、出演者が随分と楽しんでいるようにも見える。
作品の性質上、数多くの登場人物がそれぞれの役柄を演じていくが、そのどれもが滑稽だ。
まともなのはアシスタントマネージャーの戸田恵子と、新堂の元妻である原田美枝子ぐらいではなかったか。

副支配人の役所広司は元妻に会って、思わず今晩ホテルで行なわれる“ステージマン・オブ・ザ・イヤー”で表彰されるのだと言ってしまうのだが、開かれるのは“スタッグマン”(鹿の交配技師)の表彰パーティーだった。
客室係のハナ(松たか子)はシングルマザーだが、贈収賄事件でマスコミに追われこのホテルに雲隠れしている国会議員の武藤田(佐藤浩市)が元カレで、二人の間には子供まである。
更に彼女は行きがかり上、会社社長の愛人を装うことになってしまう。
その愛人は実は…という展開も用意されている。
オダギリジョーの筆耕係は小さな文字しか書いたことがなく、大きな垂れ幕を依頼されたがなかなかできない。
そうなったのは「謹賀新年」とすべきところを「謹賀信念」と間違って印刷してしまったためで、このあたりのギャグはよくやるもので、まだかわいい部類だ。
コールガールのヨーコ(篠原涼子)はこのホテルから退去させられても、どこからか再び入り込んでくることを繰り返しているので、ホテルの構造を従業員以上に熟知している良からぬ女で、それを見れば誰もが元気になるという角野卓造のクネクネ動画を携帯の待ち受けにしている。
ウェイターの丹下(川平慈英)は客室係の睦子に恋しているが、彼女の家に泊まった時に自分のパンツがないので彼女のパンツをはいてしまった一件を責められプロポーズを拒否されている。
大物演歌歌手の徳川膳武(西田敏行)はステージの本番前には常に駄々をこね、精神は子供のままで付き人の手を焼かせている。
あげだしたらきりがないキャラクターの可笑しさと、騒動の可笑しさだ。
登場人物はその他にも多彩で、芸能プロ社長の唐沢寿明、会社社長の津川雅彦、副支配人の生瀬勝久、総支配人の伊東四朗、 ベルボーイの幼馴染に麻生久美子、シンガー・桜チェリーにYOUといった具合だが、寺島進、浅野和之、近藤芳正 、梶原善、石井正則 なども所狭しと暴れまくる。

まともな話はきわめて少ない組み立てで、新堂の転職と元妻の思いのやりとりや、ベルボーイ(香取慎吾)が夢破れ退職していこうとしているのを小道具を駆使して引き戻してくることなどはスパイス的な話となっていた。
新堂とアシスタントマネージャー・矢部の恋模様を描き込んでも良かったが、そうなるとこのドタバタ劇がドタバタでなくなってしまうのかも知れないな。
それにしてもYOUの歌、想像以上によかったなあ。