おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

コクーン

2023-11-01 06:58:21 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2019/5/1は「暗くなるまで待って」で、以下「クラッシュ」「グラディエーター」「グラン・トリノ」「クリーピー 偽りの隣人」「グリーンマイル」「狂った果実」「ぐるりのこと。」「クレイジー・ハート」「クレイマー、クレイマー」と続きました。

「コクーン」 1985年 アメリカ


監督 ロン・ハワード
出演 ドン・アメチー スティーヴ・グッテンバーグ
   ターニー・ウェルチ ブライアン・デネヒー
   ウィルフォード・ブリムリー ヒューム・クローニン
   ジャック・ギルフォード モーリン・ステイプルトン
   ジェシカ・タンディ グウェン・ヴァードン

ストーリー
フロリダ州にある養老院に住む3人の老人、アート(ドン・アメチー)、ベン(ウィルフォード・ブリムリー)、ジョー(ヒューム・クローニン)は連れ立って近くにある空き家のプールで泳ぐのを楽しみにしていた。
ジャック(スティーヴ・グーテンバーグ)は、8人乗りの船マンタIII世号の船長。
ウォルター(ブライアン・デネヒー)という男が好条件で船を借りたいと申し出てきた。
3人の老人たち、それにベンの孫デイヴィッド(バレット・オリヴァー)が.プールに行くと、ウォルターがプール付きの空き屋を借りていた。
翌日、3人はこっそリプールに忍び込むと、プールには巨大な繭状のものが沈んでいた。
これは、ウォルターが若い美女キティ(ターニャ・ウェルチ)、フィルスベリー(タイロン・パワー・ジュニア)と協力し、海底から引き上げていたものだった。
3人はプールで泳いでいるうちに、元気が出てきて、ジョーは老妻アルマ(ジェシカ・タンディ)と久し振りにメイク・ラヴした。
アートは元ダンサーのベス(グエン・ヴァードン)に恋を打ち明け、ベンも妻のメリー(モーリン・スティプルトン)とますます仲むつまじくなり、ジャックはキティに惹かれていく。
彼女らは実はアンタレス星人であった。
100世紀前に地球を訪れた先祖がアトランティスの沈没とともに海に沈んでしまい、彼らはまゆ状の先祖を惑星へつれもどそうとしていたのだった。


寸評
中国最初の皇帝である秦の始皇帝が不老不死への憧れから、徐福の具申を受けて不死の薬を求めるよう命じたが、徐福は薬を求める旅に出立せず皇帝から金品をせしめたという話が伝わっているから、不老不死の願いは遠い昔から人が描いていた夢の一つなのだろう。
始皇帝は50歳で没しているが、この映画に登場する人々は遥かに歳を取った老人たちである。
老人ホームで死を待つだけだった老人たちが生命の水を浴びたことで体力的な若返りを果たして頑張る姿が微笑ましいが、一方で地球人のベンと異星人のウォルターの交流も胸を打つ。
ガイドで船長のジャックと若い美女異星人キティの恋模様も微笑ましいが、ベンとウォルターの信頼関係は平和を愛する人の存在の象徴で、ホッとする描かれ方だ。

アートはベスに愛を打ち明け結婚するが、歳を取っても秘かに愛していた人と一緒になれるなら凝んない幸せなことはないと思う。
彼が若者たちに交じって披露したダンスシーンには拍手喝采したくなる。
三人の中で一番面白い存在はジョーだ。
どうやらジョーは若いころから浮気癖があったらしい。
前半部分で、そのこと何らかの形で描いていればもっとドラマとしてアクセントを持たせることが出来ただろう。
若さを取り戻した彼は昔の浮気癖が出て、せっかくいい雰囲気になれた老妻のアルマを裏切るような行動を取ってしまう。
歳を取っても性格だけは変わらないということで、この男は懲りない男なのだ。
ジョーを許してしまうアルマも歳をとった所為で彼しか心を許せる相手が居なかったと言うことなのだろうか。
ベンには彼を慕う孫がいる。
孫のデイヴィッドは別れの辛さからベンの元へ行くが、母親が必死で呼び戻す。
デイヴィッドは母親の呼びかけに呼応して海に飛び込む。
孫が祖父よりも母を選択するのは当然で、僕も孫には大人になれば母親を守ってやってほしいと願うばかりだ。

ところで不老不死だが、もし人が死なない、死ねないとなったら、新たな苦悩が生じるのではないかと思う。
僕も歳をとって死を意識するようになってきたが、たとえ描かれたような若返りを果たせたとしても、今の状態を永久に保持し続ける事を望まない。
やはり天命を受け入れ天寿を全うしたいと思う。
不死を得たなら一生を通じてということがないのだから、晩年にライフワークを成し遂げると言う目標を持てなくなってしまう。
いつ来るか分からない死におびえながら、残された時間を精一杯生きる方を選びたい。
ウォルターは1万年に1回判断ミスをすると言ってベンたちにプールの使用を許可するのだが、それからするとウォルターはアトランティス大陸が沈んだ1万年前から生き続けていることになる。
宇宙船に乗り込んだ人々はその道を選択したことになるが、現状のままで生き続けることへの不安と疑問が希薄なのは信じられないし、描かれてもよかった命題だったと思う。