おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

深呼吸の必要

2022-09-14 07:37:02 | 映画
「深呼吸の必要」 2004年 日本


監督 篠原哲雄
出演 香里奈 谷原章介 成宮寛貴 金子さやか
   久遠さやか 長澤まさみ 大森南朋 北村三郎
   吉田妙子

ストーリー
2月。沖縄のとある離島。
本土とは比べものにならない陽射しが降り注ぐこの島に5人の男女がやってくる。
さとうきびを刈り取るアルバイト“きび刈り隊”に応募して来た都会暮らしの5人の若者・ひなみ(香里奈)、悠一(谷原章介)、加奈子(長澤まさみ)、大輔(成宮寛貴)、悦子(金子さやか)が降り立ったのだ。
5人を迎えるのは年老いた平良夫妻(北村三郎、吉田妙子)と“キビ刈り隊”の常連・田所豊(大森南朋)。
「言いたくない事は言わなくてもいい」。
これが、彼らが1ヶ月余り寝泊まりする平良家の唯ひとつのルール。
果たして、それぞれに“言いたくない事情”を抱えていた5人は、早速、田所の指導の下、広大な畑の約7万本のさとうきびを刈り始めるが、2月とは言え沖縄の厳しい陽差しの下での慣れない仕事は辛かった。
かつて平良家の隣に住んでいた美鈴(久遠さやか)と言う強力な助っ人の参加があったものの、先輩ヅラして偉そうに振る舞う田所への反駁もあり、一向に作業の能率は上がらない。
そんな中、大事件が起こった。
嵐の晩、港へ出掛けた田所が運転を誤って脚に大怪我を負ってしまったのだ。
離島ゆえに医者はいない。
とその時、実は医者であった悠一が執刀を決意した。
手術は成功した。
そして、このことで絆を深めた7人は力を合わせ、期日までに全てのさとうきびを刈るのであった。


寸評
僕のハネムーンは沖縄だったのだが、最後の日にタクシーで空港に向かっていたら、サトウキビ畑で老夫婦が刈り入れを行っていた。
親切なタクシー運転手は車を止めて、畑からサトウキビを一本もらってきてくれた。
短く切り分けてくれていて、その内の一本をかじるととてつもなく甘かったことを思い出す。
もう何十年も前の想い出であるが、この映画を見ていてその事を思い出した。
キビ刈り隊と称されるアルバイトの連中がオジイと共にサトウキビを刈り取っている姿が何度も描かれ、刈り取り作業の大変さが伝わってくる。
田所は挫折した連中がここに逃げ込んでくると言ってひんしゅくを買うが、各人にその傾向があり、それぞれの秘密とは何かに興味が向かうが、それらを積み残したまま映画は彼らの刈り入れ作業を描き続ける。
離島でのアルバイトなので当然彼らはオジイの家に泊まり込みである。
最初はぎこちない雰囲気が漂っているが、なかなか心を開かない加奈子の存在があるものの徐々に彼らは打ち解けていく。
僕は学生時代にかなり大きなケーキ屋さんでクリスマスケーキ作りのアルバイトをしたことがある。
普通のケーキ作りと並行してクリスマスケーキを準備していく。
直前は徹夜まがいの作業が続き、僕は正規従業員に交じって寮に泊りまり込みであった。
寮といっても作業場の2階が宿舎で、かなり広かったが雑魚寝状態であった。
映画で描かれたような雰囲気で寝起きしていたが、そこでの生活は実に楽しいものであった。

田所がリーダーとして指示しまくる態度に不満を持ちながら、秘密を抱えた彼らは島の生活に馴染んでいく。
田所が誘ってひなみ、悦子、悠一たちと一杯やるシーンは島の居酒屋の雰囲気が出ている。
悦子に田所は「どうして、そんなにえらそうなのか」と問われるが、店員が「田所さんはきび刈り隊の一番の古手だから」と言われ納得する。
しかし田所のようなリーダーがいないと、いくらアルバイトと言っても作業が進まない。
何人か集まるとリーダーは必要なのだ。
加奈子が心を閉ざしている理由は最後まで分からなかったので気になった。
ひなみは非正規社員である派遣として働いていて、今回は自ら派遣したと言っている彼女に何があったのか結局分からず仕舞いだが、深呼吸を持ち出す役割があったのだろう。
悦子は観光気分で、アルバイトの中には彼女のような人がいないとおかしいから、違和感のないキャラである。
サトウキビ畑の広さに圧倒されるが、徐々に借り入れた場所が拡がっていくことが嬉しくなってくる。
「フィールド・オブ・ドリームスだ」と言って、田所、悠一が大輔を誘って三人で刈り入れが済んだ場所でキャッチボールをするシーンに妙な感動があった。
サトウキビ畑と野球と言えば「フィールド・オブ・ドリームス」だからだが、過去の選手の復活と言う意味もあって、大輔に対する激励だったと思う。
刈り入れが済んで彼らは元の生活に戻っていくラストシーンは余韻を残した。
加奈子が言うように、起きて仕事して食べて寝れば、また朝がやってくるのだ。
人生はポジティブに生きなくてはならない。