おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

仁義なき戦い 完結篇

2022-09-11 06:52:46 | 映画
「仁義なき戦い 完結篇」 1974年 日本


監督 深作欣二
出演 菅原文太 伊吹吾郎 野口貴史 寺田誠 桜木健一
   松方弘樹 小林旭 北大路欣也 曽根晴美 宍戸錠
   山田吾一 八名信夫 山城新伍 田中邦衛 川谷拓三
   金子信雄 天津敏 内田朝雄 野川由美子 中原早苗

ストーリー
警察の“頂上作戦”で幹部連中が大量に検挙された後、大友組が勢力を回復、広島やくざ組織は、山守組、打本会、大友組の三巴の対立となっていた。
だが、彼らは警察の目を欺くために山守義雄(金子信雄)を会長に、傘下の武田組、江田組、早川組(元打本会)、大友組、呉の槙原組、さらに徳山、福山など近郊都市の組織までも大同団結させて、政治結社「天政会」を発足させた。
昭和41年春。天政会々長の二代目を継いだ武田明(小林旭)は、警察の取締りに対処し、会の再建強化を図るが、反主流派の大友(宍戸錠)、早川(織本順吉)らの反発にあう。
41年4月3日。天政会にすっかり抑えられていた呉の市岡組々長・市岡輝吉(松方弘樹)は、天政会の混乱に乗じ、天政会参与・杉田佐吉(鈴木康弘)を襲撃し射殺した。
この事件で県警は、天政会壊滅のため、武田以下首脳を順次検挙する方針を打ち立てた。
保釈の身であった武田は、再逮捕される前に腹心の若頭・松村保(北大路欣也)を三代目候補に推薦した。
しかし、この処遇を快く思わない大友、早川は激しく反発、松村殺害を企てるが未遂に終る。
その頃、網走刑務所に服役中の広能昌三(菅原文太)を訪ねた市岡は、大揺れの天政会の現状と、今こそ広能に広島をとるチャンスが到来したと告げた。
43年秋。市岡は、かねてより親しかった早川英男を介して、大友勝利と兄弟分の盃を交し、広島進出の足掛りを掴み、松村組の縄張り内に組員を送り込み挑発。
44年11月15日。遂に腹に据えかねた松村は、市岡を殺害、これを期して、政治結社としての天政会を解散させると同時に傘下各組をも解散、自分の直属にした。
45年6月、武田が出所し再び会長に復帰。
45年6月30日。呉市繁華街で広能組組員・清元(寺田誠)が槙原組々長(田中邦衛)を射殺。
45年9月18日。広能昌三が七年振りに出所した・・・。

寸評
年数が経つごとに輝きを増している「仁義なき戦い」であるが、本編はその最終章であり、時代的には第一作の頃から20数年を経ておりヤクザ世界の新旧交代劇が描かれている。
メインキャストだった菅原文太の広能昌三は服役中で最後の方にしか出てこない。
貫禄のある役者不足のためか、以前に登場したことのある松方弘樹や北大路欣也は別人を演じている。
第二作で登場した大友勝利が復活しているが、俳優は千葉真一から宍戸錠に代わっている。
宍戸錠も狂人的性格を持つ大友を見事に演じているが、凶暴さと狂人ぶりは千葉真一の方がハマっていた。

前作でも広能と武田の間で自分たちの時代は終わったという会話があったように思うが、今回はさらに若い者への代替わりが強く描かれ、それにまつわる権力闘争が実録風に手持ちカメラを多用して映し撮られている。
まず天政会が結成され、権力の座は金子信雄の山守から小林旭の武田に引き継がれる。
さらに武田の逮捕により、更に若い世代である北大路欣也の松村がのし上がってくるという図式である。
組織内の権力闘争の相手は単純な大友を担ぐ早川達であり、もともと敵対していた広能の弟分である松方弘樹の市岡がそれに割って入ることで物語は進行していく。
すっかりおなじみとなったテーマ曲とナレーションに乗って手際よく描かれていくのは相変わらずだ。

北大路欣也の松村が襲撃され瀕死の重傷を負うが一命をとりとめ、死の境目をさまよいながらも3代目襲名披露の場に出ていく。
「総長賭博」における名和宏の石戸と同じ状況である。
その姿を見て、小林旭の武田が「俺たちにはもうマネは出来ない」と広能につぶやく。
このシーンが今回の映画の総てだったように思う。
広能は獄中で手記を書いていて、その最後に「上に立つ者がバカだったから、下の者たちが割を食った」というようなことを書いている。
筆頭は金子信雄の山守だったのだろうが、大友や早川だって含まれるし、田中邦衛の愼原のように優柔不断でどっちつかずの男も例外ではない。
権力闘争が起きるかどうかは別にして、世代交代はどの世界にもあることで自然現象のようなものである。
そしてリーダーの優劣によって組織が大きく変わることも歴史が証明している。
狭い世界では家督相続や経営者の継承、大きな世界では国家を背負う首相や大統領の交代劇においては、上手く世代交代が起きてほしいし、若い世代が育っていてほしいものである。
能力のないものがリーダーになることほど、下の者にとって不幸はないのである。
その時の下の者が国民であってはならない。

シリーズの中心人物だった広能が、顔も思い浮かばない桜木健一演じる若い組員の佐伯明夫が殺されたことで引退を決意するとしてこのシリーズは終わりを迎えるが、抗争はまだまだ続く事を暗示している。
暴力団の抗争はなくなったわけではなく、経済ヤクザなどとして社会の中に溶け込んでいって分かりにくくなっていることが恐ろしい。
「仁義なき戦い」は日本版ノワールとしての金字塔である。