おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

助太刀屋助六

2022-09-21 07:44:14 | 映画
「助太刀屋助六」 2001年 日本


監督 岡本喜八
出演 真田広之 鈴木京香 村田雄浩 鶴見辰吾 風間トオル 本田博太郎
   友居達彦 山本奈々 岸部一徳 岸田今日子 小林桂樹 仲代達矢

ストーリー
17歳で江戸へ出ようと故郷・上州を飛び出した助六(真田広之)は、その途中、ひょんなことから仇討ちに巻き込まれ助太刀を買って出たことが病みつきとなり、以来、江戸へ行くのも忘れて助太刀屋稼業に精を出し、全国を流れ流れて七年が過ぎようとしていた。
久しぶりに故郷の宿場町へ戻り、母の墓に詣でた助六だが、町の様子がどうもおかしい。
幼なじみで小役人になっていた太郎(村田雄浩)によると、もうすぐ仇討ちがあると言う。
兄の仇を討とうとしているのは脇屋新九郎(鶴見辰吾)と妻木涌之助(風間トオル)。
だが、助六の助太刀は必要としていないらしい。
自分の出番がないと知り、昔なじみの棺桶屋(小林桂樹)に向かった助六は、そこで元八州廻りの役人・片倉梅太郎(仲代達矢)という侍、即ち新九郎と涌之助の仇と出会う。
既に戒名も貰い、泰然自若としたこの侍は、どうも敵面には見えない。
暫くして、仇討ちの検分役、関八州取締出役・榊原織部(岸部一徳)が到着し、いよいよ仇討ちが始まった。
果たして、片倉は斬られ仇討ちは終わる。
ところがこの侍、実は助六の父親だったのである。
そのことを棺桶屋から聞かされた助六は、父親の仇討ちをと思うのであったが、又敵は御法度。
そこで、父親の位牌に助太刀を頼まれたということにして、織部たちを斬っていく助六。
そうして、見事位牌の助太刀に成功した彼は、しかし織部の供揃えによって射殺されてしまう。
助六の遺体は、彼と秘かな想いを通わせていた太郎の妹・お仙(鈴木京香)ひとりで弔われる……筈が、実は生きていた助六。
お仙と一緒に暮らすべく、ふたりして江戸へ向かうのであった。


寸評
これが岡本喜八監督の遺作とはちょっと寂しい気がするが、どの監督にあっても遺作は過去の作品に比べるとガッカリさせるものが多いような気がする。
それはとりもなおさず、過去の作品の素晴らしかったことの証明で、遺作と聞くと一層の期待感を持たせてしまうことも原因の一つかもしれない。
おそらく岡本喜八はこの作品をドタバタ調の軽快な活劇にしたかったのだろう。
見始めてすぐにそう感じたのだが、それにしてはテンポがあまりにも遅すぎだ。
そのことはこの作品においては致命的な欠陥だ。
テンポが遅い割には端折った部分が多くて大雑把な感じを受ける。
仇討の助太刀をやっていた助六が父の仇討を繰り広げることになる。
この映画の最大の見せ場だ。
しかし登場人物の動きが、良く分からない。
役人の一人を斬った助六はお仙のいる二階に逃げたはずだが、お仙はどうしたか、助六はどのようにして外に逃げたのかが分からない。
また何処をどう動いて敵に近付いてきたのかも分からないので緊迫感が全く湧いてこない。
助六が狙撃手に撃たれて倒れると、助六の死を悼んだのか、町の人たちが大勢出てきて屋根の上の二人に石を投げつけるのだが、何か変な展開で違和感がある。
ドタバタ劇だから手抜きが許されるわけではない。
脚本のまずさかもしれないが、岡本監督は脚本にも参加しているのだからやはり責任はある。
17歳で江戸へ出て、7年ぶりに故郷に帰ってきたっという設定にも無理がある。
それだと真田広之は24歳と言うことになるし、幼なじみの村田雄浩も同年代と言うことになる。
だとすれば村田雄浩の妹である鈴木京香はもっと若いと言うことになる。
ただでさえ鈴木京香は老け顔なんだから・・・。
ちょっと、皆が歳をとり過ぎていないか?
設定年齢をもう少しあげればよかったのにと思う。
棺桶屋が登場してくるが、棺桶屋と言えば「用心棒」における藤原鎌足を思い出すが、キャラクターに彼ほどの厚みはないし、悪役にしてはコミカルな岸部一徳の織部も中途半端なキャラクターとなってしまっている。
サブストーリーもないので、どうしても間延びした印象を受けてしまう。

真田広之のオーバーアクションと衣装は見せるものがある。
舞台の大芝居を見ているようで、鉢巻きをイキに締めた姿などは歌舞伎役者を思わせる。
映画としては活劇の部類に入るのだろうが、殺陣の凄さはないし、いわゆる“チャンバラ”も見られない。
真田広之が錆びついた刀を研いで仇討ちに出かけたのだから、やはり彼の大立ち回りを期待してしまった。
それがないのはチョット淋しい。
それでも、いろんなジャンルの映画で僕たちを楽しませてくれた岡本喜八監督の遺作と聞いただけで見る気になるのだから、やはり喜八監督は偉大な監督だったのだ。