おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

白いドレスの女

2022-09-07 06:33:41 | 映画
「白いドレスの女」 1981年 アメリカ


監督 ローレンス・カスダン
出演 ウィリアム・ハート キャスリーン・ターナー
   ミッキー・ローク リチャード・クレンナ
   テッド・ダンソン J・A・プレストン

ストーリー
フロリダに事務所を構える弁護士ネッド・ラシーンは、親友で地元の検事であるピーターと刑事オスカーと共に行きつけのコーヒー・ショップに入りびたり、暑さを嘆いていた。
その晩、涼しさを求めて海岸沿いの野外ステージをぶらついていたネッドの前を、白いドレスを着た1人の女が通り過ぎて、ネッドは思わずその女に目を奪われた。
立ち止まりタバコを吸うその女に彼は声をかけるが、彼女は、自分には夫がいるといってつき離し、パインウッドに家があるとだけ言い残して立ち去った。
幾晩かパインウッドをドライブして、やっと彼女を見つけたネッドは、彼女の名がマティ・ウォーカーといい、夫が20歳も年上であることを知る。
2階のベランダに沢山の風鈴をもつ彼女の豪邸を訪れた彼は、そこで無理やり彼女を抱いた。
外出が多く、しかも中年じみた夫エドムンドにうんざりしていたという彼女は、ネッドに激しく燃えた。
数度の激しい逢いびきの後、当然のように2人の間に殺意がめばえた。
早速エドムンド殺害の準備を開始するネッドは爆弾のプロ、テディから特殊爆弾を入手し計画を実行。
マティは未亡人になり、しばらく2人は会わないで過ごした。
そんなある日、ネッドはマティの弁護士から呼び出され、遺言状が変更されていることを聞く。
当初、遺産の半分は姪のヘザーにいくことなっていたが、それに疑問点が生じた。
フロリダ州の法律では疑問点がある場合は遺言状が無効になり全部がマティのものになるという。
その遺言状にはネッドとマティの親友メリー・アンのサインがあったため、エドムンドの死とネッドとはもはや無関係でなくなってしまったのだ・・・。


寸評
フロリダの暑さが伝わってくる出だしで、ネッドが弁護士であること、裁判所では争うことになる検事のピ-ターとは親しい間柄であること、また刑事のオスカーとも友人関係であるらしいことが要領よく描かれる。
涼しさを求めて開かれている野外ステージを立ち去る白いドレスの女に視線送るネッド。
さあ始まるぞという展開でスムーズな入りだ。
前半はネッドとマティの官能的なシーンが繰り広げられる。
マティは謎めいた人妻だが、夫に満足していないことが徐々に分かってくる。
夫は仕事に没頭していて週末しか帰ってこず、マティは性的にも夫に満足していない。
マティは拒絶しながらも思わせぶりな態度でネッドを誘惑し、当初からマティに魅かれていたネッドはマティと関係を持つようになり、肉体的に溺れていく二人を追い続ける前半部分である。
それは、まるで女の不倫物語を官能的に描くきわもの映画のような雰囲気である。

映画の転機となるのは登場しなかった夫が現れた時だ。
レストランでマティ夫婦とネッドが出会い、ネッドはマティの夫であるエドムンドから侮辱された気分を味わう。
エドムンドが直接ネッドに侮辱する言葉を浴びせて険悪ムードになるというのではなく、ネッドが侮辱を受けたような気持ちになり、無意識のうちにエドムンドへの殺意が生まれたような気がしたシーンであった。
ついにネッドはエドムンドの殺害を決意しマティに打ち明けるのだが、ここからサスペンス性が一気に噴き出す。
ネッドは特殊爆弾によってエドムンドを殺害しようとするのだが、ここで登場するテディとネッドの関係が希薄なのは気になった。
どうやら弁護士のネッドはテディを助けたことがあり、テディはその恩義からネッドに協力するのだが、テディのネッドに対する忠誠心がなぜあれほど強いのか不思議に思えた。
またピーターによればエドムンドは殺されて当然の男だったようなのだが、殺されて当然の行為とは何であったのか分からないことが殺人のインパクトを弱めていたと思う。
よく分からないのがネッドが過去にかかわった事件の影響である。
後半でマティにネッドを紹介した弁護士が出てくるが、その彼にネッドが「あの事件のことをしゃべったのか」と詰問するシーンがあるのだが、それを話されるとまずいこととは何だったのかも分かっていない。
サスペンスとして、観客が色々と推理する描き方は出来たような気がする。

最初は遊びのつもりだったのに、やがて本気でお互いが愛し合うようになり、邪魔になってきた女の夫を殺すという筋立ては驚くような筋立てではない。
この作品もそのようなものかと思われた所で、夫の遺産を巡る話が出てきて一気に趣が変わる。
マティが俄然悪女として浮かび上がってくることで、僕はやっと身を乗り出すことができた。
ただマティがテディを訪ねる展開は少々短絡的過ぎて興味を削いだ。
キャスリーン・ターナーが体を武器に目的を達する悪女を見事に演じている。
逆に検事でネッドを追及する側であるピーターのキャラクターが中途半端に感じた。
おかしな動きをする変な検事なのだが、そのヘンテコぶりが生かされていなかったように思う。
悪女サスペンスとしてよくできていると思うが、もう少し脚本を練っていれば大傑作になったかもしれない。