おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

勝利への脱出

2022-09-01 07:31:01 | 映画
「勝利への脱出」 1980年 アメリカ / イギリス / イタリア


監督 ジョン・ヒューストン
出演 シルヴェスター・スタローン マイケル・ケイン
   カロル・ローレ ペレ マックス・フォン・シドー
   ダニエル・マッセイ

ストーリー
第2次大戦下のドイツ南方ゲンズドルフ収容所では、捕虜になった連合軍兵士たちが、鉄条網の中で、ボール・ゲームに暮れる絶望的な日々を送っていた。
そんな捕虜たちの中に、目立って機敏なゲームぶりを発揮する米軍大尉ハッチがいた。
彼らの様子をじっとみつめるドイツ情報将校フォン・シュタイナーはふと、ドイツ・ナショナル・チーム対連合軍捕虜のサッカー試合を思いついた。
戦前、英国ナショナル・チームのリーダーとして活躍していた捕虜のリーダー、コルビー大尉は、このプランを受け入れ、条件として、ドイツ各地の捕虜収容所からの選抜でチームを組むことを要求した。
その中には、サッカーの経験のないハッチの名もあった。
コルビーは、このサッカー・ゲームを利用した巨大な脱走プランを練っていたのだ。
一方、ドイツ軍上層部は、この試合をイベントとして対外宣伝に利用しようとしていた。
捕虜チームの猛練習がはじまり、イギリスのテリーなど各国から、ならず者たちが集まるが、団結固い彼らに、部外者だったトリニダードのルイスがチームに参加した。
サッカー経験のないハッチはルール違反でチームをタジタジにさせるが、彼は予定通り収容所を脱走し、パリでレジスタンス組織の美しい娘レニーと接し、計画の全貌を知らされた。
パリ郊外のコロムビア・スタジアムの選手の控え室の真下から外部に通じるトンネルを掘り、ゲームの最中に全員脱走という作戦で、翌日収容所に戻ったハッチは仲間に詳細を告げ、ゲームではゴール・キーパーの任につき、観衆で埋めつくされたパリのスタジアムでゲームは開始された。


寸評
脱走モノの映画としてまず思い浮かぶのはスティーブ・マックィーンの「大脱走」だろう。
こちらはシルベスター・スタローン主演の脱走モノである。
「大脱走」は何と言ってもスティーブ・マックィーンが恰好よかったのだが、「勝利への脱出」のシルベスター・スタローンにはその恰好よさがないので僕の中では少し評価が低い。
いくらゴール・キーパーとは言え、あまりにもサッカー選手としての動きに迫力がないのである。
スタローンはボクシング選手としては様になっていたが、フットボール選手でサッカーの経験がないと言うことになっていても最後のPKを阻止するシーンは盛り上がりに欠けている。
脱獄モノだが前半のスタローンが脱獄に至るまでは付け足しのようなもので、実際スタローンの脱獄はハラハラするところもなく簡単に成功してしまっている。
やはり見どころはこの作品の特徴でもあるサッカーの試合だろう。

試合に臨む捕虜の選手を往年の名選手たちが演じているのだが、僕はサッカーファンでもないし、世代もちがっているので詳しく知らないのだが、流石に神様ペレだけは知っている。
ペレの他に、オズワルド・アルディレス、カジミエシュ・デイナ、ボビー・ムーア、マイク・サマービーなどがエンドクレジットで姿と共に紹介されている。
最大の見せ場はペレのオーバーヘッドシュートのシーンである。
高い跳躍から空中で見事なバランスを見せ、信じがたいボールコントロールでネットを揺らす同点ゴールだ。
ペレが決めるであろうことは分かっているが、それでも感激する場面である。
しかし全体的に試合のシーンにスピード感とスリル感に乏しさを感じる。
脱獄モノでありながらサッカーに重点を置いている作品だけに、試合の緊迫感をもう少し上手く出してくれても良かったように思う。

スポーツ映画の側面も持ち合わせているので、脱獄機会を捨ててでも試合に勝ちに行くのは分かっていてもスカッとする場面となっている。
ドイツの将校が元サッカー選手ということで、敵ながらフェアプレーの精神を残していて、連合軍選手の好プレーに思わず拍手してしまうのが微笑ましさを超えて感動的ですらある。
彼は戦争がなければよいと思っていた人物であることも後押ししている。
脱獄のスリルは最後になっても描かれないが、意表を突く方法で脱獄が成功する。
「大脱走」では逃げ延びた捕虜もいたが、射殺されたり連れ戻されたりした捕虜もいたのだが、彼らは全員が逃げ延びたのだろうか。
強制労働をさせられてやせ衰えていた北欧選手もいたが、彼らの活躍シーンがあっても良かったし、スタローンにゴールキーパーの席を譲った選手の活躍場面も欲しかった。

見終ると、視点を変えた脱獄映画だったと満足するが、一方でシルベスター・スタローンは肉体派としてボクシングをやっていた方が存在感を出せる人で、サッカー選手を演じるのは無理だと分かった。