おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

慕情

2021-11-20 08:53:37 | 映画
「慕情」 1955年 アメリカ


監督 ヘンリー・キング
出演 ジェニファー・ジョーンズ
   ウィリアム・ホールデン
   イソベル・エルソム
   ジョージャ・カートライト
   トリン・サッチャー
   マーレイ・マシソン

ストーリー
中国人とイギリス人のハーフで女医のハン・スーインは、国民政府の将軍の夫人だったが、良人が共産軍との戦いで戦死してからは、香港病院で働いていた。
ある日、病院の理事長宅でパーティが開かれた時、彼女はアメリカの従軍記者マーク・エリオットと知り合った。
仕事先のシンガポールから戻ったマークが病院にスーインを訪ね、泳ぎに行こうと誘った。
マークはシンガポールにいる妻には6年も会っていないと話し、スーインは香港では彼女のような混血を悪く思う人がいるからと言って、自分に深入りしないようにマークに釘を刺す。
スーインへの愛を語るマークに、スーインは眠れるトラを起こすなという中国のことわざを話すものの、彼女自身もマークに魅かれていく。
翌日は香港を一望できる病院の裏の丘で会い、草の上で二人は恋人関係になった。
マークは妻と正式に離婚して、スーインと結婚すると誓っただが、彼の妻は離婚に同意しなかった。
スーインはそれを聞いて、マークを優しくいたわるのだった。
その後、マークがマカオに出張すると、スーインは理事長の反対を押しきってマカオに向かった。
2人の楽しい週末もほんのひとときに過ぎない。
朝鮮に戦争が起こったためマークは現地へ急行しなければならなかったからである。
スーインは理事長にさからってマカオに行ったことから、病院に勤めることができなくなり、友達のノラの家に寄寓することになった。
彼女は毎日マークに手紙を書き、また彼からの便りを読んで淋しさをまぎらしていたが、ある日マークは共産軍の爆撃で帰らぬ人となった。
新聞でそれを知ったスーインは、マークと共に永遠の愛を語り合った思い出の町を歩く。


寸評
love is a many-splemdored thing
it's the April rose
that only grows in the early spring
love is nature's way of living
a reason to be living
a golden crown
that makes a man a king
映画「慕情」のテーマソングである。
このテーマ曲が最後になって歌い上げられるが、メロディはBGMとして常に流れているような印象である。
否応なく耳に残るのだが、これがまた実にいい曲で、「慕情」といえばシーンよりもこの曲が思い浮かぶ映画史に残る名曲である。
悲恋物語だが内容は深くはなく、主人公の ジェニファー・ジョーンズとウィリアム・ホールデンが楽しいデートを繰り返すだけなのだが、青春ものにはないウットリとさせる大人の恋の雰囲気に酔いしれることができる。

ジェニファー・ジョーンズのハン・スーインは中国人と英国人のハーフで、中国ではそうだったのか混血ということで差別を受けていて、ハン・スーイン自身もその事を引け目に思っている所がある。
時は1949年で香港はイギリス統治下にあり、中国本土では中国共産党と国民党が内戦を繰り広げている。
ハン・スーインは香港への大量難民を生み出している共産党を非難しているし、彼女の妹は共産党に殺されることを恐れて外国人の家に逃げ込んでいる。
国民党による台湾成立は1949年の12月で、1955年製作のこの作品ではアメリカが支持している台湾を擁護するように国民党を同情的に描いていると思われる。
ウィリアム・ホールデンのマークはハン・スーインと恋に落ち、関係が冷え切っている妻に離婚を切り出すのだが、その様子は描かれていない。
描いてもそれなりに盛り上がる演出ができたと思うが、どうやら争う場面などの暗いシーンは排除してあくまでもホンワカムードを押し通したかったのではないかと思う。
やましいことをしてはいけないと言っている病院の理事長も、実はハン・スーインの友人を愛人としているのだが、そのことを非難することもない。
理事長は病院の患者よりも自分の妻に気を遣う横暴な男なのだが、その事も追及することもしていない。
すべて、マークとハン・スーインの甘いムードを壊す要素として排除されている。
その事は一応の成果を上げているとは思う。

僕は社内旅行で香港とマカオに行ったことがあるのだが、雰囲気は1955年当時とは随分違っていた。
ビクトリアピークからの夜景ツアーが到着日に設定されていたのだが、寝坊して遅れてきた女の子を空港まで迎えに行くことになり、僕だけビクトリアピークには行けなかった。
様子が変わっていても「慕情」のロケ地から湾を眺めたかったのだが、後にピクトリアピークと想定されれいる場所は別の場所で撮影されたらしいことを知った (余談)。