おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ブレードランナー

2021-11-10 08:36:55 | 映画
「ブレードランナー」 1982 アメリカ / 香港


監督 リドリー・スコット
出演 ハリソン・フォード
   ルトガー・ハウアー
   ショーン・ヤング
   エドワード・ジェームズ・オルモス
   ダリル・ハンナ
   ブライオン・ジェームズ

ストーリー
2019年。この頃、地球人は宇宙へ進出し、残された人々は高層ビルの林立する都市に住んでいた。
宇宙開拓の前線では遺伝子工学により開発されたレプリカントと呼ばれる人造人間が、過酷な奴隷労働に従事していたが、製造から数年経つと感情が芽生え、人間に反旗を翻すような事件が多発するようになった。
レプリカントを開発したタイレル社によって安全装置として4年の寿命が与えられたが、後を絶たず人間社会に紛れ込もうとするレプリカントを「殺害=解任」する任務を負うのが、専任捜査官ブレードランナーであった。
タイレル社が開発した最新レプリカント「ネクサス6型」の一団が人間を殺害し脱走、シャトルを奪い、密かに地球に帰還した。
タイレル社に押し入って身分を書き換え、ブレードランナーを殺害して潜伏したレプリカント男女4名(バッティ、リオン、ゾーラ、プリス)を見つけ出すため、ブレードランナーを退職していたリック・デッカードが呼び戻される。
デッカードは情報を得るためレプリカントの開発者であるタイレル博士と面会し、彼の秘書レイチェルもまたレプリカントであることを見抜く。
人間としての自己認識が揺さぶられ、戸惑うレイチェルにデッカードは惹かれていく。
レプリカントのリーダーであるバッティはタイレル社長を惨殺し、デッカードとバッティが対決する…。


寸評
熱狂的なファンもいる「ブレードランナー」だが、あまりにも前半部分が長すぎる。
酸性雨が降り注ぐ環境破壊された地球をイメージ的に描くシーンが延々と続くという感じから抜けきれない。
退廃的な街の雰囲気があり、時々日本人や日本の看板が出てくるので我々日本人は興味を持ってみることが出来るが、町の看板はゴルフ用品と読み取れるような物もあるが、その文字は違っていたりして、それが意図したものなのかどうかは分からない。
なんでも、この町の美術はリドリー・スコットが日本を訪れた際に得た新宿歌舞伎町のイメージから得たものと聞き及ぶが、確かに歌舞伎町は退廃的なムードのある街なのかもしれない。
ここで描かれる地球上の街は環境汚染がありスラム化している。
近未来的な高層ビルがあり、空飛ぶ自動車が飛び交っているが、どうやら金持ち階級は宇宙へ避難しているようで、まるでどこかの国で起きているような状態である。
そんな雰囲気を醸し出しているセットはなかなか素晴らしい。

レプリカントたちの命は4年と限られているので、その寿命を延ばしてもらおうと製造元へ忍び込もうとしているのだが、とは言うものの彼等は人間を殺してやって来たいわば人間に対する反逆者だ。
その反逆者的な行為が描かれないので、彼らがどんなに恐ろしい敵対者なのかが感じ取れない。
いやむしろ、人間に抵抗する敵対者というイメージをわざと避けていたのかもしれない。
脚本的に面白いと感じたのはレイチェルの存在だ。
彼女もレプリカントなのだが、タイレル博士の死んだ姪の記憶を埋め込まれているために、自分がレプリカントだと気づいていないという設定が、物語を膨らませていた。
レプリカントは製造から数年経つと感情が芽生えて人間に反旗を翻すようになった存在なのだが、彼女に関しては感情の芽生えが逆に作用してデッカードとの関係を意味深にしている。

僕は今のところ健康体で余命を宣告されているわけではないが、死の時間を決められていたとしたらその恐怖はどのようなものだろう?
ある時間がきたら突然死が訪れ、その時を本人も知っていたとしたらという状況は想像できない。
命とは何なのかを考えさせられる内容で、その意味では哲学的な命題を抱えた作品でもある。
人は自分の寿命を知らないから、明日を信じて頑張れるような所がある。
僕にはブレードランナーとして活躍するデッカードのヒーロー性よりも、命を制限されたレプリカントの苦悩の方が伝わってきた。
その代表は言うまでもなくバッティだ。
彼が最後にとる態度と言葉には胸が詰まるものがある。
彼の手から飛び立つ白いハトのシーンはシュールでバッティの哀しみを表す何とも美しいシーンだ。
このシーンを撮りたいがための「ブレードランナー」だったとさえ思えてくる。
レプリカントが感情を持てば、結局人間に近づき、人間は本来善なのだと言っているようでもある。
オタクファンの支持を集めそうな内容だが、それだけに僕は手放しでこの作品を評価できないでいる。