おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ブレードランナー 2049

2021-11-11 07:46:57 | 映画
「ブレードランナー 2049」 2017年 アメリカ


監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 ライアン・ゴズリング
   ハリソン・フォード
   アナ・デ・アルマス
   マッケンジー・デイヴィス
   シルヴィア・フークス
   レニー・ジェームズ

ストーリー
荒廃が進む2049年のロサンゼルスは海面上昇で沿岸部が多く失われ、内陸に後退した市街地は巨大な防波堤に囲まれ、6月でも雪が降っていた。
労働力として製造された人造人間“レプリカント”が人間社会に溶け込む中、危険なレプリカントを取り締まる捜査官“ブレードランナー”が活動を続けていた。
LA市警のブレードランナー“K”は、ある捜査の過程でレプリカントを巡る重大な秘密を知ってしまう。
ウォレス社を訪ねたKは、過去の記録から発見したトランクの遺骨は2019年に逃亡したレプリカントのレイチェルであること、元ブレードランナーのリック・デッカードと恋愛関係にあったことを知ったのだ。
ウォレスは、タイレル博士が確立していたレプリカントの生殖技術を以前より欲しており、片腕であるレプリカントのラヴにレイチェルの子供を見つけ連れて来るよう命令する。
Kはデッカードを知る数少ない人物であるガフを訪ね、彼の行方を訊くも手がかりを得られない。
モートンの農場に戻りもう一度調べると、根に彫られた「6-10-21」数字の刻印、レイチェルの子供のものと思われる靴下、赤子を抱いた女性の写真などを発見する。
数字はK自身の情緒安定用の疑似記憶にある木彫りの馬の玩具(木馬)に彫られた数字と同じであった。
一方ラヴはLAPDに忍び込み、レイチェルの遺骨を盗み出す。
Kは2021年6月10日生まれの出生記録・DNA記録を調査し、同一のDNAを持つ男女の2名の記録を発見、女児は病死し男児だけが生きていること、2名とも同じ孤児施設に在籍していたことを知る。
Kは高名なレプリカント用記憶作家のアナ・ステリン博士を訪ね、自身の記憶の真贋鑑定を依頼する。
ステリンは本物の誰かの記憶であると回答、Kは激情を露わにする。
Kは「出自を知らずにレプリカントとして働いていた対象の子供を見つけたが、処分した」と嘘の報告をした。


寸評
評判の良かった作品の続編が作られることはよくあることだが、大抵の場合続編は前作を上回ることが出来ないばかりか凡作に終わってしまっていることが少なくない。
しかし本作は前作以上の出来で続編と呼ぶのをはばかられる作品に仕上がっている。
抑圧された職場で働き、貧困地区に住み、人間もどきと蔑まれながら生きているKというキャラクターの描かれ方は前作のハリソン・フォード以上だ。

レプリカントに起こったある奇跡の存在が時として切なさを、時として悲しみを伴って迫ってくる。
レプリカントは作り物なのだが、心や記憶が人間よりも人間らしい。
本物であるはずの登場してくる人間に人間にらしさを感じないので、レプリカントが際立ってくる。
欠如しているものは愛だ。
Kと共にいるジョイは感情を持ったAIを有したホノグラムのような存在だ。
ジョイほどのバーチャル女性でなくても、それに似たものは存在してそうな現実世界ではある。
そのジョイが生身の女性とシンクロしながらKと愛を交わすシーンは、愛と言うものの素晴らしさと切なさを描きだしたすこぶるいいシーンだ。

SF作品ではあるが、このような作品を撮られると日本映画は太刀打ちできない。
ミュージカルやスポーツ映画でも感じてしまう。
資本力か、あるいは才能の集積なのか、ハリウッドはスゴイと思わせる。
哲学的で深淵なメッセージ、圧倒的といえる映像美に酔いしれる。
巨大な廃墟のような施設は迫力があり、そこでKが記憶を呼び起こし子供の頃に隠した木馬のおもちゃを発見するところなどは思わず引き込まれた。
Kだけでなく、僕もレプリカントから生まれたのがKだと思った。
寡黙なKがすごく雰囲気を出している。

Kがデッカードの居る場所を訪れると、デッカードはバーチャルなショーを楽しんでいる。
そこでエルビス・プレスリーやフランク・シナトラがフォノグラムで登場してくる。
マリリン・モンローもちょっと出たような気がする。
ストーリーを離れて僕は随分楽しめた。
これはコロンビアの配給だが、コロンビアはSONYによって買収されている。
ウォークマンなどの先進的な商品を世に送り出してきたSONYだが、最近は画期的な商品を開発できていない。
CDを再生したら、そのシンガーのフォノグラムが同時に出てくるような物を開発できないものか。
人間が想像する物はほとんど実現可能と言うから、そんな商品を開発してほしいと思った。

なるほど、生まれた子供はこの人だったのか。
意表を突いた展開でよかった。
余韻を楽しませるようにエンドロールの時間は非常に長い。