おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

砲艦サンパブロ

2021-11-15 08:52:14 | 映画
「砲艦サンパブロ」 1966年 アメリカ


監督 ロバート・ワイズ
出演 スティーヴ・マックィーン
   リチャード・クレンナ
   キャンディス・バーゲン
   リチャード・アッテンボロー
   マコ岩松
   サイモン・オークランド

ストーリー
1926年。中国統一を夢みる中国人の排外思想が激しくなり、デモが暴徒と化していた。
列国は揚子江沿岸の権益と人命財産を守るため艦艇を出動させていて、アメリカの砲艦サンパブロ号もその1つであったが、ある日その砲艦にホルマンという1等機関兵が赴任して来た。
彼は旅の途中、伝道学校の教師としてアメリカからはるばるやって来た美しい女性シャーリーと親しくなった。
そして彼女の魅力にひかれたが、そのまま別れてサンパブロ号の一員となったのである。
彼は意外にも砲艦が中国人の支配下にあり、コリンズ艦長でさえままならぬ状態にいることを知り、機関室だけでも自分が責任を持とうとしたが、中国人乗組員は彼に非難の目を向け、それを阻止した。
ホルマンが艦内で親しくなったのはフレンチーだけで、ふたりはよく一緒に上陸しては酒場へ出かけた。
フレンチーは酒場の女メイリーが好きになり、何とか彼女を見受けしたいと考えた。
そんな時、事態が急に悪化しアメリカ宣教師ジェームソンが阿片を栽培した罪で国民軍に捕らえられた。
アメリカ側と中国側との折衝がなって、彼は許されたが伝道団の人々は軍に保護されることを拒絶した。
艦は彼らを残し上海へ引揚げることになった。
一方フレンチーもホルマンの協力でライバルたちを一蹴し、メイリーと結婚した。
いよいよ中国民の示威運動が激烈になり、サンパブロ号もついに動けなくなってしまった。
何カ月もそんな状態が続いたが、暴徒の手は身重のメイリーの上にも及び彼女は空しく死んでいった。
蒋介石が南京を占拠、米海兵隊の上海上陸の報が入ると、コリンズ艦長は宣教師たちの救出に向かった。


寸評
本編の前に音楽編があり途中休憩ありの3時間以上の作品だが、それほど多くのエピソードが盛り込まれているわけではないので、果たしてこれだけの長さが必要だったのか。
のんびりした展開に少々退屈してくるような所がある大作である。
砲艦というタイトルがついているが、戦闘シーンはあるものの期待できない内容となっている。
登場する砲艦は映画のために製作されたらしいもので、CGや合成ではない本物を用いたリアルさがあり、上海を想定した人々が行きかうセットや背景となる風景などはロバート・ワイズらしいものを感じさせる。

描かれている時代は、中国の植民地支配を目論む欧米列強に対して、中国側は国民党、共産党による内戦を行いながらも、両軍とも外国人排斥を繰り広げている頃である。
その歴史の流れに翻弄されるアメリカ海軍のオンボロ砲艦に乗り合わせた人々の物語となっている。
砲艦に乗り合わせた主要人物は スティーヴ・マックイーンの新任の機関兵ホルマン、リチャード・アッテンボロー演じる気のいい同僚のフレンチーとリチャード・クレンナの館長である。

その中ではフレンチーの物語が切ない。
フレンチーは娼館に行った時に新入りのメイリーという娼婦に惚れてしまい、身請けのような形で彼女を連れ出して結婚するのだが、一緒に住むことができない。
ある宿に彼女を隠したフレンチーは毎晩のようにサンパブロから冷たい海を泳いで会いに行くのだが、その無理がたたって病気になってしまい、メイリーに抱かれながら死んでしまう。
メイリーは彼の子供を宿していたが、中国人に連れ出されて殺されてしまうという悲しい物語だ。
映画の中では一番ジーンとくるエピソードで、僕はこの二人の物語をもっと詳しく描いて欲しかったくらいだ。

ホルマンはフレンチーの死やエンジン整備を教え込んでいたポー・ハンの死、また伝導学校で優秀と紹介された学生を殺してしまうことなどを通じて苦悩していく。
ホルマンは女教師のシャーリーのこともあって、伝導学校に残ろうとするまでになるが、いまひとつ彼の苦悩が伝わってこないものがある。

苦悩する人物として、僕がもっと理解できなかったのが館長であるコリンズ大尉である。
彼はアメリカの名誉と自分の名誉だけを考えているような人物である。
国民党が濡れ衣を着せられたホルマンを引き渡せと迫ってきた時に、乗組員たちが引き渡せと叫ぶ中で引き渡しを拒絶し、国民党軍に威嚇射撃を行う。
それは米海軍の誇りとしてとった態度なのだろうが、米中戦争の引き金を引いてしまったかもしれない重圧を感じ自決を決断しかける。
その時、上海でアメリカ人が殺されたことで米英軍と戦闘が起こったことを知らされたことで、自分が戦闘を開始したわけではないとなって変心し、口裏合わせをして奥地の米国人を救出に向かう。
彼が自決を考えるまでになる苦悩は想像の範囲内で、よく分かるようには描かれていなかったように思う。
分からなかった理由は、時代背景となっている中国の当時の状況への僕の理解不足だったのかもしれない。