おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ペイチェック 消された記憶

2021-11-14 09:15:45 | 映画
「ペイチェック 消された記憶」 2003年 アメリカ


監督 ジョン・ウー
出演 ベン・アフレック
   アーロン・エッカート
   ユマ・サーマン
   コルム・フィオール
   ジョー・モートン
   ポール・ジアマッティ

ストーリー
情報化社会が進んだ近未来。
マイケル・ジェニングスは企業から依頼を受け開発を請け負うフリーエンジニアとして活躍している。
彼等の仕事は企業の内部に携わる物が多く、情報の安全の為に仕事を請け負っていた間の記憶は消される事になっていた。
そんな彼が、大企業の社長である旧友ジミーから仕事を依頼された。
期間は3年と長いが、報酬は莫大なものである事から、マイケルはその仕事を引き受ける。
しかし、契約終了後に受け取ったものは金ではなく、ガラクタとしか思えない19個のばらばらなアイテムが入った封筒のみで、示された誓約書には“報酬を辞退する代わりにこの紙袋を受け取る”という自分のサインが確かに入っていた…。
困惑するマイケルをある事件を追っているFBIが襲い身柄を拘束する。
彼に尋問をするが、記憶が消されている彼からはマトモな答えが返ってこない。
遂にはマイケルの生命が危なくなったとき、封筒の中のアイテムがその窮地を脱するきっかけとなりFBIから逃げることに成功した。
窮地に陥ったジェニングスは、元雇い主である起業家ジミー・レスリックに殺される前に、同僚であり恋人だったレイチェルの助けを借りて、すべての謎を解くために奔走し始める。
やがて封筒の中のアイテムは、ジェニングス自身が開発した未来予知マシンを破壊するよう誘導するために、任務終了の直前に自らが自分宛てに送ったものだと判明する。
レスリックがそれを悪用すると世界が滅亡してしまうからだった。


寸評
過去に行ったり未来を見たりするのはFSの世界の中では不動のテーマなのだろう。
それを扱った作品は指折り数えることができる。
この作品もそのジャンルのSFであるが、ひねっているのは未来を見越した主人公が、自分を助けるためにごくありふれた品物を封筒に入れて未来の自分に託している点である。
主人公は記憶を消されているので、消された期間に何があったのかを覚えていない。
自分が係わった装置を破壊しに行くのだが、彼を抹殺するための刺客が追いすがってくるアクション物でもある。
主人公が襲われた時に封筒の中身の物が役にたってピンチを切り抜けていくので、どの小物がなんの役に立つのか、そしてどのように作用するのかの興味が場面ごとに湧いてくる。
それは時にはサングラスであったり、安全ピンであったり、コインであったり、ライターのガスボンベとライターだったりするのだが、どれもがごくありふれたものだ。

未来のことで一つだけ知ることができるとすれば、僕のようなゲスな人間はロトの当選番号を希望するだろう。
自分の未来は知りたくない。
未来を知ってしまえば自分の人生は面白くないだろう。
主人公のジェニングスは冒頭で描かれる仕事でも記憶を消されているから、作品の時代には記憶を消し去ることはごく普通に行われていることになる。
脳の仕組みが随分と解明されているから記憶のメカニズムも明らかになって、人間の記憶を司る部分を処置することで実際に記憶を消すことができるのかもしれない。
しかしそれは人道に反することだから行われることはないだろう。

太鼓の世界や未来社会に自分を置くことはVSX技術や3D技術を駆使すれば可能だろうが、しかしそれは仮想の世界に自分を置いてみるだけのもので、本当の自分の未来を見ることなどは不可能だ。
人間が想像する未来技術の中のほとんどがやがて実現されるであろうと言われているが、いわゆるタイムマシンに乗って自分の未来を見ることだけは実現されることはない。
この作品では未来を見ることができる装置がターゲットとなっている。
主人公のジェニングスは装置の破壊を目指し、敵となったジムは不具合を修理させ富を得ようとし、FBIはその装置を手に入れようとしている。
未来に敵対国が攻撃してくることが分かれば先制攻撃できると言う思惑がある。
ジェニングスは戦争が戦争を呼び世界が滅びると言う悪夢を思い浮かべて装置の破壊を決意している。
戦争が戦争を呼んで世界が滅びるのもSFにはよくある設定である。
ユマ・サーマンは、僕には「キル・ビル」のイメージが強い女優さんで、ヒロインと言うイメージが持てないのだが、イメージ通りのアクションだけは見せている。
記憶が欠落している面白さはもう少し何とか出来たのではないかと感じる。
ジェニングスが棒術に長けていることも上手くいかされているとは言い難いところがある。
とは言え小道具の使い方が目新しい着想となっている娯楽作で、難しい理屈をこねていない所がいい。