おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ボー・ジェスト

2021-11-18 09:00:05 | 映画
「ボー・ジェスト」 1939年 アメリカ


監督 ウィリアム・A・ウェルマン
出演 ゲイリー・クーパー
   レイ・ミランド
   ロバート・プレストン
   スーザン・ヘイワード
   ブライアン・ドンレヴィ
   J・キャロル・ネイシュ

ストーリー
英国のブランドン卿の邸宅には卿の夫人、姪のイソベル、それに孤児を養子として引き取ったボー、ジョン、ディグビーのジェスト3兄弟らが住んでいた。
ジェスト3兄弟は勇ましい遊びが好きで外国人部隊の砂漠の戦闘に憧れていた。
ブランドン卿は生活は楽でなく、夫人は秘宝の「青い水」を模造品に代えて生活をしのいでいたが、ボー・ジェストはこれを知っていた。
15年の月日が流れ、今ではジョンとイソベルは愛し合う仲だった。
ある日突然卿が金策に帰り、「青い水」を売ることになった。
ボーが売る前に青い水と名がついた宝石サファイアを見たいと言い出した。
夫人が秘密の部屋から取り出し皆の前で披露した。
面々が見守る中で突然電気が消えて暗くなり、再び明かりが灯った時にはサファイアが消えていた。
誰もが自分は盗んでいないと主張したが、翌朝ボーは盗んだのは自分だというメモを残して家出した。
しかもそれからディグビーも宝石を盗んだのは僕だと書いて出ていった。
残ったジョンも兄弟の後を追うことになり、イソベルはジョンに宝石を盗んでいないか尋ねると、ジョンは「この家で盗んだのはイソベルだけだ」と言い残して去っていく。
アフリカでフランス軍の外国人部隊に落ち合った3人はある夜「青い水」について話した。
これを聞き取ったマーコフ軍曹は、ボーが隠し持っているものと睨み、奪い取る機会を狙うようになった。
アラブ軍の猛攻でついにボーも傷ついて倒れ、ボーはジョンに手紙と包みをブランドンの叔母に届けてくれと言って息を引取った。
ジョンと落ち合ったディグビーはアラブ軍に合い、ジョンを逃すための犠牲となった。


寸評
オープニングは興味をそそる上手い入り方である。
砂漠の中にあるジンダヌフ砦にボージョレー少佐の部隊が到着するが、砦は異様な姿の死体だらけである。
ラッパ手1人が調査に入るが、砦は全員死んでる全滅状態だ。
もう一人が砦に入ると、死んでいる死体に手紙が残されていて、自分が宝石をを盗んだと書いてある。
ボージョレー少佐が入るがラッパ手がいなくなっていて、後から入った兵が見た死体もなくなっている。
ミステリーを示してこの後の展開に期待を持たせる導入部となっている。

場面は変わって15年前のイギリスで、子供たちが海戦ごっこで遊んでいる。
二隻の艦船が砲撃を浴びるシーンから入る描き方が凝っている。
長男がこの遊びを取り仕切っていて、彼らがその後の主人公たちになることが分かる。
遊びの延長で騎士の鎧の中に入ったボーは夫人の行動を見ることになり、それから15年後に成人した兄弟の姿と宝石の紛失劇が描かれる。
誰が盗んだのか分からないのだが、盗んだのはボーであることは明白であり、犯人探しに興味が行くことはない。
しかし、一体誰が電気を消したのか、それとも偶然にうまい具合に停電になったのか、ミステリーの一つだ。
3兄弟は外人部隊で再会するが、そこに悪役として鬼軍曹のマーコフが登場する。
このマーコフのキャラは強烈で、砦の場面では彼が主役ではないかと思うぐらい目立った存在である。
彼に比べれべれば、ゲーリー・クーパー演じるボーの影は薄い。
マーコフに反抗する者たちによる暴動が計画されるが失敗し、マーコフが処罰を断行しようとしたときにアラブ軍の襲撃を受け、砦の全員が応戦せざるを得なくなる。
そうなってからのマーコフの指揮ぶりが凄くて、ゲーリー・クーパーは主役の座を奪われている。
ゲーリー・クーパーが子供の頃のように長男としての差配を見せるところは少なかった。
マーコフは目を覆いたくなる行動をとるが、ボーが言うようになかなかの戦上手なのである。
戦場ではこの様な男が頼りになるのかもしれない。
砂漠の中を攻めてくるアラブ軍の描写は美しささえ感じるシーンの連続である。
一次攻撃、二次攻撃と変化を持たせて描いているが、二次攻撃以降の場面で、前回の攻撃で撃たれて死んだはずのアラブ兵の死体がないのはどうしたものかと思った。

やがて砦は全滅するが、その中でボーの死とマーコフの死が冒頭の謎を紐解くように描かれていく脚本の妙が示されて、大いに満足する展開である。
ジョンがなぜマーコフの死体を運んでいるんだと思っていたのだが、それがジョンとディグビーの会話の中で語られ、なるほどあの場面が伏線だったのかと唸った。
最初に「女性に対する愛は月のように欠けていく。だが兄弟愛は星のように不変である」との格言が示されているが、この作品は美しい兄弟愛を描いている。
昨今の映画では兄弟の確執を描くことが多いので、この様な純粋とも言える兄弟愛はかえって新鮮に思える。
ラストシーンは少し尻切れトンボ感があるように思うが、序盤に示されるミステリーや伏線の回収が巧みな作品で、制作年度を加味すると十分に堪能できる作品となっている。