おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ホワイトハンター ブラックハート

2021-11-22 08:41:04 | 映画
「ホワイトハンター ブラックハート」 1990年 アメリカ


監督 クリント・イーストウッド 
出演 クリント・イーストウッド
   ジェフ・フェイヒー
   ジョージ・ズンザ
   アラン・アームストロング
   マリサ・ベレンソン
   シャーロット・コーンウェル

ストーリー
1950年代黄金期のハリウッドで、映画監督ジョン・ウィルソンは、天才肌の成功者ではあるものの傲慢な男として有名だった。
新作映画の撮影を控える彼の家へ、友人で脚本家のピート・ヴェリルが訪ねて来る。
ヴェリルにアフリカとその地に生きる動物達の魅力を語ったウィルソンは、映画を全編アフリカで撮影することに決めていたのだが、映画撮影よりも憧れの象狩りに挑戦したいというのが彼の本心だった。
強引なウィルソンの態度にスポンサーは不安を覚え、プロデューサーのポール・ランダースは頭を悩ませる。
ストーリーについても、ハッピーエンドにすべきだと主張するヴェリルの意見を退け、ウィルソンは主人公を船の爆発で死亡させると譲らない。
ロケ隊より一足先にウガンダ、エンテベ空港に降り立ったウィルソンとヴェリルはマネージャーのラルフ・ロックハートらに出迎えられ、ホテルに移動する。
アフリカの地に興奮するウィルソンは、早くも撮影より象狩りに関心を寄せていた。
ウィルソンとヴェリルはコンゴに向かい、現地の青年キブを雇ってウィルソン達は狩りに出かけた。
すっかり象狩りに魅了されたウィルソンは、映画撮影より狩りを優先させようとする。
呆れ返ったヴェリルはロンドンに帰ると宣言するが、到着したランダースに説得され結局残ることになった。
ウィルソンはロケ地を勝手に変更してキブの暮らす村で撮影することにし、撮影が始まるという時に突然の雷雨に見舞われ撮影は中止となったので、ウィルソンはこれ幸いと早速狩りに出かけてしまう。
数日雨が降り続き、ようやく雨が上がり撮影が始まると思った矢先、象の目撃情報を得たウィルソンは撮影を放って狩りに出かけてしまう。


寸評
ジョン・ヒューストンは豪快な性格であったと言われており、「アフリカの女王」ではロケーション中に映画撮影を放り出して狩猟に没頭してしまうなどの奇想天外なエピソードを多く残していて、後年にはキャサリン・ヘップバーンに自伝で批判されている。
作品は「アフリカの女王」の撮影現場をモデルにしていて、クリント・イーストウッドのジョン・ウィルソンがジョン・ヒューストンで、マリサ・ベレンソンのケイ・ギブソンがキャサリン・ヘップバーンだろう。
ボロ船の耐久性を試すためにジョンやピートが乗り込んで荒れ狂う川を下っていくシーンは、正に「アフリカの女王」である。
映画は、天才肌の監督のわがままさや気骨のある行状をとらえていく。
ジョンはわがままし放題のとんでもない男だが、アフリカのホテルで同席した美女のマーガレットがユダヤ人への差別発言を始めたことで、怒ったウィルソンが彼女に強烈な皮肉を浴びせるという一面を見せる。
更に黒人ウェイターを罵倒する白人ホテルマンにも激怒して喧嘩沙汰を起こしているから、ジョンは不当な差別には毅然として立ち向かう男でもあることで、観客は彼に対して嫌悪感を持たない。
彼は一言で言えば正義漢なのだ。
ジョンのキャラは役者としてのイーストウッドの魅力が大きいと思う。

映画は派手な見せ場があるわけではなく、美しく捉えたアフリカの自然を背景にジョンが行うわがままな行動のエピソードを追うだけで、明確なテーマを追っているわけではないが力強い演出で作品を支えている。
やはりアフリカに行ってからが面白い。
ジョンは撮影よりも像狩りに夢中である。
象は陸上動物の中では最強の動物で、真の百獣の王は象なのは間違いがない。
それ故に危険もあって、特に子供がいる群れは危険この上ないことは想像できる。
動物には子供を守る本能が人間よりも強くて、カラスですら知らないで巣の近くに来た人間に襲い掛かってくる。
僕も泣き叫ぶカラスがいた道路を歩いていた時に、突然後ろから4度も襲われた経験がる。
ようやく雨が上がり撮影が始まると思った矢先、象の目撃情報を得たジョンは撮影を放って狩りに出かけてしまう。
キブに案内されると林の中に親子がいたが、白人のベテランハンターは非常に危険だと狩りの中止を訴える。
千載一遇のチャンスを逃したくないジョンはキブの意見を聞く。
キブが挑戦したいと答えたため彼らは象に向かって前進する。
すると子象を守らねばならない親の象が突進してくる。
ジョンは狙いを定めてライフルを身構えるという緊迫したシーンだ。
象狩りにおいてあのような場面に出ったら逃げないものなのだろうか。
キブがやったことは逃げても無駄と知っての行動なのだろうか。
村の人々は「ホワイトハンター、ブラックハート、白人の狩人、邪悪な心」」と太鼓をたたく。
ジョンは力無く「アクション」と声をかけるが、ラストの数分間はイーストウッドの表情が最大限の効果を発揮した名シーンとなっている。
監督、脚本家、プロデューサーがそれぞれの立場で言い合う内幕をみせながら、アフリカの大地に入り込んだ中々の力作となっている。