ある日曜日のことだった。
いい型の鯛が、まるまる一匹、安く手に入ったので、
「鯛しゃぶをしよう」と。
ゴンザが頭や骨といった『あら』で丁寧にダシをとり、
私はいただきものの、おろしたての包丁で身を薄切りに。
横浜は今日、すごい暑さ!
畑へ向うサイクリングロードには、もう藤の花が咲いていました。
ここは公共の場所なれど、誰かが藤棚を仕立て.....
その下に椅子まで二客置いて、
誰でもそこで小休止が出来るようになっている、粋な場所♪
.....と。
ゴンザが「エスパー弟も呼ぼうよ。俺、電話してみる♪」と言い出した。
エスパー弟が、大の魚好きであるのを知っている彼は、
「せっかくの鯛だから」と、いそいそと携帯を手にとり、
何やら楽しそうに話をしてくれている。
「もう少ししたら迎えに行くからさ♪」
我が家からは、車で5分ほどの距離に住むエスパー弟は。
私がその他もろもろ、鍋の具を用意している間に、
迎えに行ったゴンザに連れられ、やってきた。
昨日も登場しました、『ポーズカフェ』の、バナナのタルト。
「おお、すごいね~」
「でしょ、でしょ?ゴンザが丁寧にダシをとったんだよ。きっと美味いよ」
ご馳走を目の前に、期待は高まる。
「どれどれ」 「うっま~い♪」 「やべぇ!鯛」
ゴンザ特製の骨ダシで軽くしゃぶしゃぶし、
たっぷりの青ネギを入れたポン酢で食べる鯛しゃぶは、おそろしいほどの美味さ。
「刺身もイケるよ~♪」「おお、ほんとだね!」
芯から魚好きの三人は、
貪るように鯛を食べつくし、あったかで幸福な余韻に浸る。
あ、そうそう、今年はこんな茄子を植えました。
まっちゃん★~、お勧めの水茄子、育ててるよー♪
そして、楽しい時間はあっという間に流れてゆき.....
エスパー弟を送る段になって、我々はわいわいと車に乗り込んだ。
「そういえばさ~」
弟宅に近づいたころ、ふと私は思い出す。
「あの女の子...やっぱり一年経ってもお金を返しに来なかったね」
後部座席の弟は「へっ!?」っと言ったまま、しばらく無言になり.....
私が何のことを言ってるのかわからずに、戸惑っている様子だ。
畑の数か所で、ますます巨大化してゆくローズマリーのそばには、
なぜかタンポポが食い込むようにたくさん咲きます。
これは、飛んできたタンポポの種が引っかかりやすいからなのか、
それともコンパニオンプランツ的に、互いを好むからなのか...不思議。
「なんか、自然のフラワーアレンジメントだねぇ♪」
「ほら!あの『そりゃ寸借詐欺じゃん?』って言ってたヤツ!
結局お金は返してもらえなかったんだし、
もう一年経ったから、そろそろ『エスパー弟を励ます会』を開きたいんだけど」
.....と。
エスパー弟は、突如、「あぁ!」と大きな声で反応し、
「そんなのすっかり忘れてた!」と言った。
「あっ.....あれ!?余計なこと思い出させちゃった?」
「ご.....ごめんねぇ~」
その間があまりに面白くて、思わず吹き出しながら焦った風を装い、
私とゴンザは茶化すように言う。
「そうそう、erimaは酷いヤツにゃのよ。ちゃあこはよく知ってる」
当事者であるエスパー弟とはといえば、
これまたエスパー一族らしく、
「あ~、もうね。せっかくね、忘れてたのにね。
傷口に塩を塗りこまれたというかね。広げられたというかね」
と、自虐的に笑いを取りにきて.....
「ひどい....酷すぎる」
三人は、笑っては呟き、また、呟いてはげらげら笑い、
こうなるともう止まらない。
畑に咲く花を持ち帰って飾ってみました♪
結局、エスパー弟を車から降ろすまで、一族は笑い続けた。
「じゃあね、またね!美味しいものが手に入ったらまた電話するからさ」
あまりに可笑しくて、
笑いで肩を震わせながら、私とゴンザは言い、
言われたエスパー弟も、笑いながら車のドアを閉める。
互いに手を振り、その姿が見えなくなっても.....
一族のことだ。
きっと笑っているのは同じだったろう。
(そしてこれを読んだエスパー妹もPC前で大笑いしているだろう)
その後も私とゴンザは、ついに家に帰り着くまで、笑い続けた。