川崎、金山神社の、春のお祭りには。
「かなまら様をバカにするとバチがあたるよ」
そう、地元の人々に噂されていた、小さな神社のお祭りが、
こんなに有名になるなどと、
あの頃誰が想像しただろう?
インターネットの普及に伴い、
個人のBlogや動画共有サイトでそれがとりあげられ始めると、
その、おおらかでプリミティブなお祭りは、
世界の人々の知るところとなって。
各国、色とりどりの髪や目の色をした人々が、
毎年、生命の源を求めてくる。
それはおどけや悪ふざけではなく、
日本人にとっては、ごくごく自然な信仰でも、
特に西洋の、『外国人』にとっては、
奇異に見え、面白いのだろう。
世界中から観光客がやってくる。
...彼らのお目当ては、祭りの主役である、男根型の神輿や飴。
我々にかなまら様の存在を思い出させてくれた、
『ペンシルバニアから来た人』が、
どれだけ日本人の習俗を理解しているかはわからないけれど、
「日本人はヘンタイだよー」と、言っていたから、
やはりこの国土で、この習俗で、育った者たちにしかわからない、
自然や生命への崇敬の念というものがあるのだろう。
この祭りに行くのを、とても楽しみにしていたその人に、私は尋ねる。
「あなたの国でこんな祭りをしたら、大変なことになるでしょ?」
そして、
「でもそれは、日本人にとってとても自然なこと。
だって命の根源だし、大切なことだから」
「日本人はみんな昔からヘンタイなのよ」と。
宗教や習俗や、それにまつわる土着のルールは、
その土地の、自然条件の中で暮らす上で必要だからこそ、
生まれるものだというが。
かつて(今も?)多くのタブーに縛られていた、西洋から来た人々には、
おそらくタブーだからこそ、それが面白いのに違いない。
私たちのそれは、ただの自然であるのに対し。
...この日本で、「貞節」だの、「純潔」だの言い始めたのは、
明治以降の話だということだ。
その名は通称『かなまら様』。それは、命を寿ぐ、生と性のお祭り。
鉱山や鍛冶の神様でもある。
文明の、文明たる所以が何なのかは知らないが。
元々、日本人は無邪気で、美や、生命や、ものの理を、
とてもよく理解していた民族だという。
今も、男根信奉、女陰信奉は日本中の各地に存在し、
それはタブーではなく、生命への賛歌である。
私たちはそれを、誇るべきなのだろう。