ささやんの週刊X曜日

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

狂人理論の狂人たち

2017-09-24 11:25:16 | 日記
米朝首脳間の罵(ののし)り合戦がますますエスカレートしている。今度
はトランプ米大統領がツイッターで、北朝鮮の金正恩を「常軌を逸した人
物」と呼ばわったとか。

罵り合戦がここまでエスカレートしたからには、この表現などとりたてて
論(あげつら)うほどの言葉ではないように思えるが、「常軌を逸した人
物」の原語は madman 、つまり気違い、狂人である。このニュースを伝
えたNHKは、「気違い」や「狂人」が放送禁止用語に当たると考えて、
「常軌を逸した人物」という穏当な表現を使ったのだろう。穏当な表現に
「意訳」したぶんだけ、トランプのツイッター発言のインパクトは薄めら
れているが、要は、米大統領が北の独裁者を「狂人」呼ばわりしたという
ことである。

「狂人」と聞けば、すぐに思い浮かぶのは、「狂人理論」である。「狂人
理論(madman theory)」とは、ゲーム理論の一種で、「オレは激情に我
を忘れて、キレると何をしでかすか分からないアブナイ男なんだぜ」と相
手に思わせることで、相手をビビらせ、優位に立とうとする交渉戦術であ
る。

トランプは金正恩を「狂人」呼ばわりすることで、「オレは狂人理論を知
らないわけじゃない。お前は気違いのフリをして、核のボタンを押しかね
ない危険人物だと思わせ、世界を恐怖に陥れているが、それが演技だとい
うことくらい、オレは見抜いているんだぜ」と言おうとしているのではな
いか。「オレはお前とは違って、お前なんかよりずっとアブナイ人間なん
だぞ!フリじゃないぜ。本気でお前を潰してやるからな」とも。

罵り合いの非難合戦は、どうやら狂人(の演技)合戦の様相を呈してきた
ようだ。

そうそう、我々の身近にも「欲求不満が昂じて、怒りをまき散らす人物」
のフリをして、自分の嫉妬心や暴力への意志を、相手にぶつけようとする
「困った人」がいるよね。
コメント
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