趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『廃墟に乞う』 佐々木 譲

2010年06月16日 | 
題名に惹かれました。
なんともいえない乾いた寂しさ漂う感じで
気持ちが揺さぶられる気がしたのです。



この本は、仙道孝司という休職中の刑事が主人公。
北海道の各地で起きた6つの事件の短編集です。

表題作は直木賞受賞作です。
佐々木譲さんの作品は、初めて読みました。
話題となった作品の数々は知っていましたし、
読みたいと思っていたのですが、
佐々木さんの作品も図書館で大人気です。
今作も予約を入れてようやく順番が回ってきました。

舞台となる北海道の町々がいいと思いました。
オーストラリア人が増えたニセコ、
廃れてしまった旧炭鉱町、
漁業が盛んな港町、
競走馬の生産牧場がある博労沢などなど
それぞれの土地柄が織り成す事件の模様が浮かび
さながらロードムービーのよう。
共通するのは、寂しさ、侘しさ、やりきれなさ。
それはやはり殺人事件が起きるからなのか、
それとも心を病んだ主人公にあるのか・・・。

ある事件で心に傷を負った仙道は、医師の命令で休職中なのだけれど
何かと事件関係者から頼りにされ、懇願を受けて
刑事としてではなく事件を調べていくのです。
そして、警察とは別の視点から真相に近づいていく。
その近付き方がいいな、と思いました。
仙道の繊細な人柄と、多くを明かさない密やかさが。。