趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

「横道世之介」吉田修一

2009年10月22日 | 
新聞広告に惹かれて読んでみました。
面白かったですよ~

吉田さんの作品は
新聞小説『悪人』の連載を読んでいました。
寡黙な主人公の運命が気になり
読み続けた記憶があります。
この「横道世之介」も新聞小説だったようですね~
加筆修正ありと記載されていました。

内容は80年代の大学生活一年間のお話。
主人公の世之介くん、大学進学のため
地元九州から上京するところから始まります。
多分当時の学生の多くがそうだったような
大学とバイトと友人たちとの他愛もない生活。
先の読める展開かな、と思いきや
場面が変わり20年後の
つまり現代の生活がはさまれているのです。

世之介くんの何とも言えないのんびりした感じと
彼を取り巻く人間達の話の数々。
とりわけ‘祥子ちゃん’が気に入りました。
可笑しくってつい吹きだしてしまう
楽しい小説でした。

でも、それだけではないのです。
それがきっと吉田修一さんなのでしょう。
感動して、ほろりとさせられました。

心に残ったのは
‘大切に育てるということは「大切なもの」を与えてやるのではなく、
 その「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、
 その強さを教えてやることなのではないかと思う。’(P-364)
とても深い言葉だと思いました。

蛇足ですが、
もしかしたらこの世之介くん、私の後輩になるのかも。
大学周辺の描写に母校が浮かび、びっくりして
懐かしく思い出してしまいました。。