「熱源」 川越宗一著 第162回直木賞受賞作です。
「BOOK」 データーベースより
故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、
やりとげなければならないことがる。北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。
人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を
追い求める人々がいた。明治維新後、樺太のアイヌに何が起こっていたのか。
見たことのない感情に心を揺り動かされる、圧巻の歴史小説。
いわゆる北方領土のひとつ、日本名「樺太」 ロシア名「サハリン」。
私たちはこの北の島、樺太(サハリン)のことをどれほど知っているでしょうか?
1875年(明治8年)、「樺太・千島交換条約」が締結され、日本は樺太の権利一切を放棄し、
その代わりにロシア領であった千島列島全域を日本の領土としました。
この交換条約は日本にとってかなり不利です。樺太の方が面積も広く、資源も豊富です。
なぜこんな条約を結んだのか素人の私でも不思議でなりません。
しかし日露戦争でロシアに勝利した日本は樺太の南半分を取り返します。
そして第一次世界大戦を経て第二次世界大戦で連合軍に敗れた日本は、
北方領土すべてをロシアに明け渡す結果となりました。それが現在まで続いています。
そんな樺太の歴史に翻弄される二人の主人公、アイヌ人「ヤヨマネスク」とポーランド人「ブロニスワフ」。
(登場人物の名前が舌を噛みそうでなかなか覚えられず苦労しました)笑。
大国ロシアに飲み込まれそうになりながら、アイヌ人として誇りを持ち生きていこうとするヤヨマネスク!
同じくロシア帝国から祖国を救おうと戦い、当時流刑地であったサハリンに流されたブロニスワフ!
この二人が樺太で出会い、様々な出来事を通して心を通じ合わせ、物語が進んでいきます。
後半では二葉亭四迷、金田一京助、南極探検隊隊長白瀬中尉なども登場。
知っているようで知らない樺太先住民族のアイヌの歴史、文化、風習。
史実に基づいたフィクションとのことですが、壮大な歴小説。とても勉強になりました。
こうした歴小説を読むにつけ、この歳になっても自分が余りに知らないことの多いことに驚愕します。
教科書では知りえなかった日本の歴史を読書を通じて知ることに私の好奇心は満たされます。
また折しもロシアのウクライナ侵攻と北方領土侵攻が重なり、心痛む思いでもありました。
読後、余韻の残る読み甲斐のある本でした。直木賞受賞に納得の1冊です。
私は図書館本(ハードカバーの単行本)で読みましたが、Kindle版も出ているようです。
芥川賞や直木賞受賞作はいつもチェックしていますが、
この「熱源」はまだ受賞してから何年もたっていないのに、
全く記憶がありませんでした。
アイヌ民族や樺太の歴史に関しては教科書では、ほとんど習わな
かったので、テレビのドキュメンタリー番組を見て、
明治以降、開拓が始まると、ずっと差別や迫害を受けてきたこと
ぐらいしか知りませんでした。
苫小牧市の博物館の常設展示で、丸木舟やアイヌ民族の衣装などを
見ましたが、ざっと見る程度で、詳しい説明は読みませんでした。
こんなことではいけませんね。
もっとアイヌ民族や北方領土のことなどにも関心を持つべきでした。
北方領土問題は何の解決もされないうち77年が過ぎ、
ロシアのウクライナ侵攻が、日本とロシアの間の「北方領土」
問の解決をさらに難しいことにしてしまいました。
花水木さんはこの本を読み通すだけの熱量があるので、
素晴らしいと思いました。
私は今、華流ドラマや韓流ドラマに嵌っていて、これだけの本を
読み通す自信はありませんが、まずは図書館に行ってみようと思います。
結構面白いのもあるようですが、今見ているのは習慣でNHK朝ドラ(今回のはあまり面白くありません)と、
大河ドラマ!こちらは夢中です。
読書は読むときは読む、読まないときは何カ月でも読まない!その差が激しいんです(苦笑)。
殆どが図書館本なので気軽に借りてこられ、面白くなければ即返してしまいます。
「熱源」最初の方は少し退屈でしたが後半は引き込まれました。
アイヌがロシアと日本の権力に翻弄され、差別と迫害のを受けてきたことに心が痛みました。
アイヌを北海道の観光の目玉としてしか見ていなかった自分が恥ずかしいです。
北方領土返還にていかなければなりませんね。関しても私たちはもっと関心を持って