7/26 晴れ
今日は西鎌尾根から槍ヶ岳を目指す。夜は薄曇りであったが今日の天気はまずまずのようだ。
テント場は双六池の北側に広がっている。5時20分、水場で水を満タンにして歩き出す。
小屋の横にそびえる樅沢岳を越えると槍ヶ岳に続く西鎌尾根の全貌が現れた。ここまで歩いてきた達成感は大きい。
右に見える谷には雲が敷き詰められその向こうに乗鞍岳が見えた。
西鎌尾根は花も楽しめるルートだった。短い夏に一斉に咲く花々、命を繋ぐ形と色の多様性に生きる力を感じながら歩を進めていく。
車百合(クルマユリ)
峰薄雪草(ミネウスユキソウ)
小梅蕙草(コバイケイソウ)、今年はコバイケイソウの当たり年とのこと。
寄せ植えのような高嶺撫子(タカネナデシコ)、伊吹麝香草(イブキジャコウソウ)、山母子(ヤマハハコ)
左俣乗越あたりから槍ヶ岳を望む。風が吹くと汗をかいた身体が急に冷えていくので長目の休憩を取る際はジャケットを羽織った。
このあたりから本格的な岩場が続く。少しいくと急坂が現れた。気合いを入れて一気に登り切ったら息が上がっていた。
歩いてきた道を振り返る。いい感じだ。
稜線を巻くこの山道を抜けると千丈乗越、槍ヶ岳はすぐそこだ。千丈乗越で残っていたアルファ米の赤飯を食べたら力が出てくるようだった。
千丈乗越から槍の肩まで単調で急なガレ場が続く。標高が上がり空気が薄くなったことを感じながら黙々と歩く。ちょっときつくなったら息を整えて再び歩き出す。10時10分、今日の宿泊地である槍ヶ岳山荘に着いた。
この時間であればテントサイトも空いているだろう。受付でテントの大きさを伝えるとテントサイトが指定され、Cと書かれた木札を受け取った。テント場でCを探すと岩の陰に槍の穂先を目の前にする小さな場所があった。2人用テントで本当にギリギリの場所だ。
テントを張り終わり登頂しようと思ったのだけれど大勢の人が取り付いていたのでしばらく待つことにする。山荘の食堂で山菜うどん(1000円)を食べた。塩っぱい汁物が身体に染み込んでいく。
うどんを食べ終わって外に出て上を見上げると、まだ人の列ができていたのでテントに戻って穂先を眺める。甘いコーヒーを作ってゆっくりと飲む。なんとも贅沢な時間だ。物資を運ぶヘリコプターが山荘にやってきては颯爽と去っていく。
カメラで山頂付近に寄ってみると頂上とその直下に人が群がっていた。
しばらくして人の流れが一段落したようなのでいよいよ登頂することにする。下山したらビールを飲もう。
空いた登山道を景色を楽しみながら登っていく。上も下も高度感があってワクワクする。突きあがる鉄の梯子、もうすぐ山頂だ。
眼下の山荘が小さくなった。テント場の自分のテントは豆粒のようだ。
空いているかと思ったが頂上には10数人の人がいた。360度見渡せるその場所はなかなか離れ難いのだろう。頂上から今日歩いた西鎌尾根を眺めると南側から雲が湧き上がっていた。
15分程周りの山々を眺めた後下山した。下山時、気が抜けたのか少し滑って右の脛を岩で打ってしまった。テントに帰って脛を見ると擦り傷ができて少し腫れていたので持っていた大きな絆創膏を貼った。
暫くすると隣のテントの人たちが帰ってきた。挨拶をきっかけに一緒に飲みながら山の話をして盛り上がった。会社のお仲間だそうで双六、槍と4人で回ったそうだ。とても気持ちの良い人ばかりであった。ひとり旅だと見ず知らずの方々と一緒になることがたまにあるから面白い。
今回の旅は酷暑の影響で昼は暑い日もあったが、ずっと好天に恵まれていた。毎日夕陽を楽しむことができ、今日は槍ヶ岳が夕陽に染まる一瞬に出会った。山で過ごす最高の一瞬だ。
テントから出て西を見渡す。空と大地が少しづつ闇に包まれていくのを見て地球は回っているのだなと思う。
明日はいよいよ最終日、少しの淋しさと大きな安堵感に包まれて眠りについた。少し飲み過ぎたな。