風になれたら

SUZUKI Bandit1250Sに乗って風になり
中島みゆきや渡辺美里を聴いて風になり
山を歩いて風になる

北アルプス 花咲く裏銀座を行く 2日目

2018-08-13 | 徒歩の旅

7/24 晴れ

気持ちの良い朝だ。アルファ米、カップスープ、甘いカフェオレ、これが今回の朝ごはんのメニューだ。水分多めで身体を温めるようにしている。年齢とともに新陳代謝が落ちてくるから身体を温めることは重要だ。

4時40分、烏帽子小屋のテント場を後にしてゆっくり歩き始める。朝焼けに染まる赤牛岳、右奥には薬師岳。歩きたい山が増えていく。

三ツ岳の分岐、ずんぐりとした野口五郎岳が姿を現す。その奥には最終目的地の槍ケ岳が見えた。開けた景色がいつもそこにあるのが稜線歩きだ。裏銀座はどちらを向いても山、そして山、人工的な形跡は限られている。心の奥からジワリと感情が膨れ上がる。

三ツ岳西峰を巻いてお花畑ルートを選んだ。登山道の両側にハクサンイチゲ、チングルマ、シナノキンバイが咲いている。

白山一華(ハクサンイチゲ)、可憐な花だ。

青の栂桜(アオノツガザクラ)、こいつも可愛い。

歩を進めると前方の水晶岳も大きくなってきた。

そして大きな石が増えてきた。大きな岩がゴロゴロしたした地形をゴーロと呼ぶ。野口五郎岳は野口のゴーロなのだと妙に納得する。烏帽子小屋を出て3時間10分、無事野口五郎岳の山頂に着いた。ぐるぐる回って頂上からのパノラマを十分に楽しんだ。

この後気温が上昇して汗が出てきた。それと合わせるかのように左右の足の親指と足裏の親指の付け根に痛みが出てきた。無理せず歩こう。まだ半分以上の行程が残っているのだ。

東沢乗越までくれば水晶小屋までもう少しだ。しかしここからがきつかった。急登、容赦ない日光、痛みの出た足、時折吹く涼しい風だけが味方だ。

かなりの水分が絞り出された身体で水晶小屋に着いた。ここから水晶岳を往復しようとして予定していたのだけれど、先のことを考えて水晶岳をパスして休憩に変更する。

水晶小屋はまだ新しいが、ここに至る道のりは簡単に想像できるものではない。その辺の話も含めて三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋に関する情報は三俣山荘事務所が参考になる。 

三ツ矢サイダー(300円)で喉を潤した。サイダーなんて久しぶりだな。小屋番の方にメニューにあった力汁(1000円)て何ですか、と訊ねると焼いた餅と根菜を味噌仕立てにしたものだと言う。力汁を食べて塩分とエネルギーを補給した。塩っぱいのがいいね。

十分休んだが、足の裏の痛さを思うとやはり水晶岳はパスして雲ノ平に向かおう。残りの水は300mL、ワリモ北分岐を過ぎて岩苔乗越に水場のマークがあったのでそこで水を補給すればいいだろう。

降ること30分、岩苔乗越に到着したが水場がない。雪渓の一番上の部分が見えるだけだ。そんな状況とは関係なく薬師岳が美しい山容を見せていた。

雲ノ平山荘まで2時間ほど、黒部源流に向かう道にも水場のマークがあったが戻って少し降るまでもなく、まぁなんとかなるだろうと祖父岳(じいだけ)に向かった。しかし暑い、水足りるかな。

すると少し行った祖父岳直下に水場があった。残念なことに水は少し濁っていた。飲めるかな?浄水器を持ってくればよかったと思ったが、まぁいいか、プールの水より美味いだろう。

ペットボトルに水をすくって飲んだ。とにかく暑くて汗が出るので冷たい水は貴重であった。人の身体の大部分は水でできているのだなぁ。

左を向けばお花畑の向こうに鷲羽山、槍ケ岳、穂高連峰、暑くても足が痛くても一瞬の輝きがそこにはあるのだ。

白山風露(ハクサンフウロ)

ハイマツの間を縫う蒸し暑い登山道を抜けて祖父岳の山頂に着いた。薬師岳がだいぶ大きくなった。

山頂を超えると雲ノ平が見えた。おお、もう少しだ。祖父岳を下りきったところの雪渓には綺麗な水が流れていてそこでも喉を潤した。今日はここまでで3Lぐらい水を飲んだと思う。

再びハイマツ帯となりそれを抜けると開けた場所に出た。そこからしばらく歩いて雲ノ平山荘に近づいていく。山荘は泊まってみたいなと思わせる佇まいだった。

小屋に着いてテント泊の受け付けを済ませて缶ビールを飲んだ。生ぬるい、が山の中なのでよしとしよう。

山荘からテント場まで30分弱、小梅恵草(コバイケイソウ)の咲く木道を歩いた。可愛い花だが猛毒を持っているそうで食べると死に至ることもあると言う。

テント場との分岐からテント場までは稚児車(チングルマ)が満開であった。ここは少し谷になっているので雪解けが遅かったのだろう。

テント場は岩が多いもののトイレと水場に近い。テントの中が熱いことを除けばなんてゆっくりできる場所だろうか。テントの中に入って居られないので日傘をさしてぼんやりと山を見ていた。目の前にはチングルマが揺れている。

水はこの通り、豊富に湧き出ている。テント場に着いて1Lぐらい飲んでしまったかもしれない。

日没の1時間ほど前、積乱雲によって太陽が遮られてようやくテントに入ることができた。テントに入ってまずすることは着替えだ。ウェットティッシュで身体を拭いてテント場で過ごすウールのTシャツを着る。汗をかいたウェアはまた明日の昼着となる。

そして今日はこれを用意した。ナイフ、ライター、絆創膏、消毒液、そしてキネシオテープ。

そしてこれができあがり、足にできたマメから液を出したのだ。マメはそのままにしておくのが一番だが、マメの場所と状況によっては液を出した方が痛みが和らぐと言われている。今回の場合は後者だろう。

せっかく好天なので外で夕飯を食べてワインを飲んでいたらブヨに耳、額、顎、腕など5箇所も刺されてしまった。水の綺麗なところにブヨあり、腫れて痒くて痒くてたまらん、たまらん。

でも夕焼けを見ることができたからいいか。明日もいい天気になるだろう。

雲ノ平の夜は風もなく本当に静かだった。そしてよく眠ることができた。

 

コメント
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