久しぶりのお泊まり里帰り。コロナ以前は月に1回ペースで、ジジ・ババに顔を見せていた姫孫さん。
非常事態宣言や、県またぎ移動禁止、まん延防措置など次々出されるコロナ感染対策によって、すっかり足は遠のき、ジジ・ババに甘えることも久しくなかった。というか、ジジ・ババも優しい姫孫に癒やされることもなく過ごしていた。
母親の勤務の事情で長期里帰りが完全にOKではないようだが、時は春。陽気は良し。コロナも横ばい。学校も幼稚園も春休み。そんな条件が揃っている上に、今年小三になるお姉ちゃんから、一人でいっぱいお泊まりしたい、などと懇願されれば、親も受け入れるしジジ・ババもついつい手を広げて待つことになる。
菜の花が咲き乱れるあぜ道の散歩や、公園でのブランコやシーソーから聞こえるはしゃぎ声は、耳にもハートにもこの上なく心地よいものである。孫たちにとっても息抜きの場となることはもちろんだが、親たちにとっても束の間の息抜きになるのに違いない。ただババ殿は、おさんどんや洗濯物の処理など、里帰りのたびに疲れが残る歳になったようで大変な様子だが、唯一手放しで喜ぶのはジジだけである。
やらなければならないことに追われて、少しささくれ立った気持ちになっていても、それとなくまとわりついてきたり、あのね、などと耳元でおねだりを囁かれると、気持ちは大らかになり、誰に対しても優しい好々爺になれる気がする。これから芽を出すイロハもみじに似た小さな手は、ジジの人格を変えるほどの威力を秘めている。時にはこんな美味しい癒やしがあるから、またひとつ元気が出る。