「世の中、ちょっとやぶにらみ」

本音とたてまえ使い分け、視点をかえてにらんでみれば、違った世界が見えてくる・・・かな?    yattaro-

「やはり必需品」

2010年03月16日 | 趣味・・エッセイ
 一緒に生活してきた母が98歳を過ぎた頃、完全な寝たきりになり、やむなく療養型介護施設にお世話になることにした。
 入所面談の折「高齢ゆえいついかなる状態になるか、そのリスクをしっかり承知しておいて下さい」と医師からの宣告。
 その時「これからは携帯電話は肌身離すまい」と誓った。

 いついかなる時も施設との速やかな連絡態勢を整えておくことが、母と一緒に生きているせめてもの証しだと思いたかった。

 それから2年半、施設との連絡は固定電話で十分事足りていた。
 ある日の夕方、後にも先にもたった一度だけ、施設からの呼び出しが携帯電話に入った。

 受けると同時に車を走らせたが、部屋に着いた時はすべてが終わっていた。
 それでもまだぬくもりのある母の額に手を当てることはできた。
 そして精一杯の「ありがとう」を心の中でつぶやいた。

 どこで何をしていようと、確実に連絡が取れる重宝な代物。
 これからの生活を考えると、携帯電話はこれまで以上に手放せないと思う。
 使いこなすなどおこがましいが、てこずりながらもやっぱり仲良しでいよう。

                   2010.3.15 朝日新聞テーマ「携帯電話」掲載  
        
         ( 写真: 携帯電話も持ち始めて、早くも3台目となった )
コメント (20)
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