著者 船戸与一<o:p></o:p>
生年月日 1944年2月8日<o:p></o:p>
出身地 山口県下関市<o:p></o:p>
出版年月日 1995年5月25日<o:p></o:p>
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感想<o:p></o:p>
これはあまり知られていないアイヌの最後の反乱を主題にした小説である。その反乱はクナシリ・メナシの戦い、あるいは寛政蝦夷蜂起と呼ばれている。1789年に国後島と当時メナシと呼ばれた北海道の東部で、長年にわたる和人の搾取と横暴に耐えかねてアイヌが起こした反乱だった。塩鮭百匹に対して米1俵の約束でも、実際は2割の米しかはいっていないというインチキがまかり通り、アイヌの女は和人の男に手籠めにされるのが常態化していた。北海道の統治権を幕府から承認されていた松前藩から、アイヌとの独占的な交易を任されていた飛騨屋が、更に搾取を強めようとしたことがきっかけになり反乱が起きた。アイヌにより和人が71人殺害された。しかし、鎮圧に乗り出した松前藩は殺害に関与したアイヌを樺太に追放すると偽って投降させ、37人を殺した。<o:p></o:p>
スケールの大きい話で北海道に留まらず、ペテルブルグからイルクーツク、江戸まで広がっている。時代はヨーロッパではフランス革命が起き、日本では老中松平定信により寛政の改革が始まっている。そして定信は北海道を松前藩から取り上げ幕府の直轄領にしようと、松前藩の落ち度を探している。ロシアは国後島に来航し通商を求めている。<o:p></o:p>
登場人物も多彩だ。まず最初に出てくるのはポーランド貴族で、ポーランド独立のためにロシアの関心を極東に向けようと画策する。クナシリのアイヌに300丁の銃の提供を約束する。アイヌの中には120年前に反乱を指揮したシャクシャインの再来として尊敬される長老のアイヌ。反乱の中心人物になるその息子。和人から剣術の手ほどきを受けた孫息子。長老の利己的で残酷な妹、その女たらしの息子。和人と恋をするアイヌの女たちなど。長老のアイヌは300丁の銃が来るまで反乱を待とうとする。しかし銃は届かない。和人の中もいろいろだ。飛騨屋の番頭たちに松前藩の重役。そして江戸からやってきた僧侶二人に腕っぷしの強い幕府の御家人の息子。<o:p></o:p>
「私」の気持ちや行動を語る主人公が6人ぐらいいる。煩雑すぎる。アイヌの女と和人の男とのラブロマンスが2件もある。少し無理な設定だと感じる。それでもアイヌの歴史や生活を知ると、もっと知りたくなる。<o:p></o:p>
気ままに評価(プラス評価5点満点)<o:p></o:p>
面白さ ★★★<o:p></o:p>
意外性 ★★★<o:p></o:p>
知識 ★★★★<o:p></o:p>
スケール ★★★★
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